Ex.4 めんツナマヨパスタ

 夏になって暑い日々はどこまでも続くよ――🎵


 ついついくだらない鼻歌を歌うぐらい暑い日々が続いている。俺とナツはウニキャンを走らせて海岸沿いにやって来た。海風でちょっと涼しくなろうという洒落た魂胆だ。本当は標高の高い高原まで出かけるのが良いのだが、生憎高原までは今いる場所からは遠い。なので海水浴でも楽しみながら夏の海リゾート気分を味わおうという算段だ。キャンピングカーさえあれば、どこでもリゾートホテル気分になるからな。


 ウニキャンを止めた場所は白い砂浜が見渡せるちょっとした高台。この場所なら海にも行きやすいし、海が荒れたとしても波が被ることがないだろうという安全そうな場所だ。


 ナツを連れて海岸沿いを散歩。ナツは波際で波と戯れている。やって来た波を避けたり、引いていく波を追いかけたりしている。


「たまには海もいいもんだ」


 俺が海を堪能しているとナツが流木を咥えてやって来て、俺の前に座って期待の眼差しで見ている。


「ナツよ、その流木を投げて欲しいのかい?」


 ナツは激しく尻尾を振って答える。俺はナツから流木を貰って投げる体勢を整える。


「よし、いくぞっ!! ナツ、取ってこーい!!」


  俺が掛け声と共に流木を海に向かって投げると、ナツは猛ダッシュで海に向かって駆けていき、流木をキャッチすると戻って来た。俺はナツを撫で回してやる。


「おお、ナツは凄いなー。よーし、もう一回だ!!」


 ナツに付き合って散々流木を投げ続けて俺はあることに気がついた。


「腹が……空いた……」


「……」


「……」


「……」


 よし、今すぐ飯にしよう。しかし今は暑くて頭の回転が普段より悪い。何を作ろうかと考えるのも億劫だ。


「ナツ、帰るぞー!!」


「わんっ!!」


 とりあえずウニキャンに戻って体勢を立て直そう。ウニキャンの中はクーラーも効いているのでちょうど良い室温に保たれている。俺は冷蔵庫から冷水ボトルを取り出してグラスに注ぐと一気に飲み干した。


「水うめー!!」


 ナツも水をガブガブ飲んでいる。ナツも相当喉が渇いたようだ。


 俺はソファーにどっかりと座ると昼飯について考え始めた。夏の海といえばカレーライスが有名か。だが、ここはウニキャンのなかなので海の家というよりリゾートレストランだと夢想しよう。若干生活感に溢れる車内は見なかったことにしよう……。


 俺はソファーから立ち上がって、まずはストッカーの中を覗いてみる。缶詰を物色していたら良いものを見つけた。「めんツナかんかん」だ。「めんツナかんかん」は福岡出身の同僚にお土産で貰ったことがあって、気に入ったので時々通販で買っていたんだよな。


「めんツナかんかん」は簡単に説明すると辛子明太子の漬け込み液をツナ缶に入れたものだ。このツナ缶と辛子明太子の辛味が絶妙でご飯が進む感じの良いツナ缶だ。


 これを使ってパスタを作るか。


 パスタを茹でながら、パスタソースを作っていく。まず、ボウルにマヨネーズとパスタの茹で汁を入れてかき混ぜる。目分量だけれどマヨネーズ大さじ2と茹で汁大さじ1ぐらい。混ざったら麺つゆ(ストレート)を大さじ1ぐらいを入れてさらにかき混ぜる。辛いのが苦手な人はマヨネーズを多めにしたりするのが良いだろう。麺つゆも濃縮の場合は少なめにするのが良いだろう。


 そこに「めんツナかんかん」を入れてよく和える。これで完成だ。あとは茹で上がったパスタと和えて皿に盛り付けて刻み海苔を振りかければ完成だ。


 こんな暑い時には簡単にできるレシピがありがたいよな。


「いただきます」


 まずは一口。おおっ、まずはまろやかなマヨネーズと微かな明太子の風味が舌の上に広がる。なんと幸せな……。と思ったらガツンと後頭部を殴られるような辛味のビッグウェーブが襲ってくる!! このビックウェーブに乗らなければいつ乗るんだ? 今だろ!! この辛味が夏バテで食欲が低下した体に食欲をもたらしてくれる!!


 おおっ!! 猛烈にマグマの噴火のように腹の底から食い意地が湧いてきたぞー!!


 辛味で目が痛くなるけれど涙を流しながら俺は無心でパスタを食べて完食した。


「ふぅ――。おいしかった――」


 俺は満ち足りた思いで車窓から海を眺めるのであった。


※レシピは個人的なレシピで目分量なので適当です。

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おっさん、早期リタイアしてキャンピングカーでのんびり異世界ライフ 椎乃律歌 @shiino_rikka

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