年明け、おめでとうございます
「あ、明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします〜」
「あ、こちらこそ宜しくね、またお店に食べにいくよー」
年明け定番の挨拶を交わした2人のもとに、注文していた酒が運ばれてきて、こんな事をしている場合ではないのだが暫し雑談を楽しんだ後、やっと本題に入った。
「ところで、肉が足りないんだってねー」
「そうなんだよ~、たぶん今週の途中で完全に無くなっちゃうんだよね〜、助けてよ~」
美しい顔に苦笑を浮かべたストラーナは、
その様子を見ていたストラーナは薄茶色の髪をクルクルと指で巻きながら、同色の涼し気な眼をすこし伏せて考えを巡らせると、天上界で密かに住んでいる魔物に手伝ってもらってはどうかと提案をした。アルフォンソからすれば、1人で狩らなくても良いという願ってもない理由付けができる話だ、急いで
「いやぁ、みんな有難うございます〜」
礼をしてホッとひと息吐いていると、店のコック長ヴィルフレードからアルフォンソの携帯端末に連絡が入り、在庫が確保出来たので帰ってくるようにとお達しが来た。アルベルへ戻ると、出たときと変わらず満席で外まで魔物達の列ができており、店員たちはフル稼働している。
「ありがたや~、ありがたや~」
しみじみと頷きながら店内にある自室へ戻ると、目の前で仁王立ちをしていたコック長ヴィルフレードが、ズイッとなにかをアルフォンソへ差し出した。彼が持っていたのは、スキンヘッドにされた人間の頭部だ、アルフォンソの目がキラキラと輝き始めた。受け取って良いのかと、皿とヴィルフレードを交互に見ていたアルフォンソに、またズイッと皿が突き出された。
「疲れたろ、新年の祝いだ、受け取れ」
「ありがと〜っ!!!」
人間の頭部はアルフォンソの大好物だ、さっそくテーブルにつき、マイフォークとマイナイフを燕尾服の懐から取り出して準備は万端だ。子どものような反応をする店長の姿に少し苦笑いをしながら、ヴィルフレードは皿をテーブルに置いて一言添えた。
「どうぞ、お召し上がりください」
「いただきま~す!!」
こうして魔界の首都イルベスタにある高級料理店は、新年の営業を無事に乗り切ったのであった。
アルベル 江戸端 禧丞 @lojiurabbit
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