ブラックリストで食糧調達

 暫くの間ただ歩いていたアルフォンソは、ハタと何かを思い出したかのようにポンッと手を打ち合わせて、ふところから小型の携帯端末を取り出し、ソレを耳に差し込んで数回トントンと指で叩くと、通信が始まった。通信相手の低く美しい声が聞こえてくる、独特で落ち着く彼の声が愛しいと思うほどだ。


「あ、紘之助さーん?近々人間の戦争とかないですかねぇ、情報屋に聞くと高いから~」


『あるにはあるが直近ではないな、この前30万体分を全部やったろう……手を抜きやがったな?』


「すみませ~ん…私が悪いんですけどねぇ、肉がそろそろ底を突くみたいで、何か人間狩りしたいんですよねぇ〜、やっぱり天上界ですかね~」


 アルフォンソの気が抜けるような話し方で、鬼の一族のお偉方、殺戮を生業とする喰闇鬼くろやぎ一族のNo.2も毒気が抜けてしまった。


「最高級品の狩りは止めておけ、今のタイミングで行くと不要な噂が立たぬとも知れないからな」


「そっかぁ、それは不味いですね〜」


 ウンウンと悩んでいると、直接会って紘之助から分厚い注文表が書かれてある台帳を受け取った上で、一言提案がなされた。その提案を受けて、アルフォンソの足取りが少々軽快になった。結局は天上界へ行くことになったのだが、天上界では人間たちが魔界と同じく、御祝いモード一色である。


 罪を犯す者も急増する、ならば、最初からブラックリストに載っている人間を狩って、そのまま行方不明状態で魔界へ持ってくればアルフォンソ達的には問題ない。他の世界から人肉を取り寄せると、人間の身体はミンチ状態でコチラに届く。しかし、人間の姿焼きやら尾頭付きの料理はどうしても人体の形をしていなければならない為、この世界で調達する必要があるのだ。


(そっかー!ブラックリストにある人間か!だったら楽チンだ~)


 上機嫌である、店の在庫が完全に無くなるまで、そう時間はない。善は急げという若干使い方を間違えた解釈で、アルフォンソは特別な魔法陣がある場所まで移動すると天上界へ向かった。そこで目立たない服装に着替え、ある場所へ足を運ぶ。


 辿り着いたのは、とある大衆酒場だ。

 その店でアルフォンソはある人物と待ち合わせをしていた、席について10分ほどで待ち人は現れた。飄々とした雰囲気の男はアルフォンソと向き合う形で座り、頬杖をついて酒を頼むと、久し振りの挨拶が始まった。男の名前はストラーナ《変人》、世界随一の発明家である。この日はちょうど、天上界の様子を見にやってきていたのだ。

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