俺の超能力

水谷一志

第1話 俺の超能力

 主人公、【八百屋のおじさん】


俺は、しがない商店街の八百屋。

しかしそんな俺にはある超能力がある。

それは、『人を含めた生き物の生死の境を見る能力』だ。


繰り返すが俺は八百屋をしている。―ということは、俺は野菜という「生き物」を売って生計を立てているわけだ。そして俺の家の八百屋は代々続いているので、それは昔から。

 そしてまだ子供だった俺は、そのことに少し罪悪感を持った。

 ―それからだ、俺が『生き物の生死』に敏感になったのは。


俺は今まで、その能力で多くの生き物を救ってきた。

そう、俺が見えるのは『生死の境』。だからその生き物は必ず死ぬとは限らない。

例えば原付にひかれそうになった猫。あの時俺はその猫の『生死の境』が見え、大きな声で「危ない!」と叫んだ。

 すると原付の運転手はそれに気づき、その原付を何とか止めその猫は助かった。

 またある時は、酒に酔ったサラリーマン。『生死の境』が見えた俺はふらふらして地下鉄の線路に落ちそうになったサラリーマンの腕を思いっきり引っ張り、事なきを得た。

 そう、俺はそうやって今まで「一日一善」に近いことを繰り返してきた。

 ―そんな俺だが、最近ちょっと後ろめたいことがある。

 俺には最近、気になる子がいる。


それはたまたま店の前を通りかかった女の子。

その子を見た瞬間―、「かわいい。」俺はそんな風に思ってしまった。

それと同時に俺には罪悪感が芽生える。

『俺には母ちゃんがいるじゃないか。』

でも、ちょっとかわいいと思うくらい大丈夫じゃないのか?

別に浮気とかそんなことを考えているわけじゃない。

ただ―、その子を見かけると少し嬉しくなるだけだ。

 ―でもそれは浮気に入るんじゃないのか?

 ―別に付き合いたいとかそういうことを思っているわけじゃない。

 ―そうだ!俺は今まで一日一善で多くの命を救ってきたんだ!

 ―ちょっとくらい、後ろめたいことができても大したことはないだろう。

 ―いやいやいくらいいことをしていても、それじゃあ意味ないよ。

 俺の頭は、悪いはずの頭はそんなことを猛スピードで考える。

そうやって悶々としているうちに、あることが起こる。

 その女の子の、『生死の境』が見えてしまった。


これはまずい!何とその女の子は、この後暴漢に襲われてしまうらしい。

―しかし俺はその女の子と話をしたことすらない。どうすれば?

そこで俺は叫ぶ。

『やすいよ!』

―その後その子の彼氏と思われる男の子が刺されたが、その女の子は俺の言葉に気づいたのか気づかなかったのか、間一髪で暴漢から逃れられた。

あとなぜか母ちゃんもその暴漢に気づき、俺たちは2人で声をあげ、女の子を助けようとした。それが幸いだったのかもしれない。

 ―刺された男の子は気の毒だが、俺の見立てでは一命はとりとめる…はずだ。

とにかく、今回の件では誰も死なない―良かった。


その後救急車と警察がやってきて、俺たちは事情聴取を受ける。

あと、母ちゃんは見知らぬ女の子とひそひそ話をしている。

 ―誰だ?

そして話の内容は少しだけ俺の方に聞こえてくる。

「今回は―、【失敗】だったわねえ。

 うまくいく演技もしたのに。」

【うん?どういうことだ?】 (終)


次の主人公、【見知らぬ女の子】



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