封印の魔王と田舎の木こり

森水鷲葉

封印の魔王と田舎の木こり

【魔王】

わはははははは!

ついに復活の時がやってきたぞ!


【木こり】

あんれまあ

でかい岩があると思ったら、ほら穴の中に人がいたべか


大丈夫か?

今、木をどかしてやるからな


【魔王】

ふっ、人の子よ

我に情けをかけるとは、身の程知らずな


世界を恐怖と混沌に陥れる

この魔王にな!


【木こり】

おい、おめえさん、自分で出られるのか?

でかい木が岩と一緒に

穴をふさいでるべ?


【魔王】

むむっ


たしかに、封印により、

数千年の眠りについていたため

往年の魔力は残っておらぬ


【木こり】

はあ?

なんだって?

おめえさん、ずっと寝てたんだべか?


【魔王】

寝ていたのではない!

眠りについていたのだっ!


【木こり】

同じじゃないだべか?


【魔王】

貴様っ!


……いやいや

エー、ウォッホン


人の子よ

この魔王が恐ろしくはないのか?


【木こり】

ふーん、おめえさん、

マオーっつーのか

このへんでは聞かないべなあ


【魔王】

なんだと?

いかに辺境の地とはいえ、

我が名が轟いていないなどということは

ありえぬはず!

貴様、戯れを言っておるな?


【木こり】

変なしゃべりかたする奴だべな

何言ってんのか、ほとんど、わかんねえ


【魔王】

むぐぐぐ……

本来であれば、一瞬で灰塵に帰してやりたいが

我の封印を解いたのだ


それなりの栄誉ある死を

与えてやるのが慈悲というものだろう


【木こり】

ごちゃごちゃ言ってねえで、

おめえさんも木をどかすの手伝え

穴の中にずっと居たいなら別だべが


【魔王】

あ、はい……


くっ……

重いな、さすが我が封印


【木こり】

けっこうな大木だべ

しばらくは薪にも困らずにすむべ


それにしても、おめえさん、力ねえなあ


【魔王】

なに!?


【木こり】

こんな山ン中、一人でいるから、

狩人かなんかだと思ってただべが

違うみてえだなあ


ここまでどうやって来たんだ?


【魔王】

我は封印で力が弱っているのだ!


本来なら、このような木と岩など

我が魔力で

跡形も残らぬようにしてくれるものを


【木こり】

おめえさん、弱いくせに偉そうだべな


【魔王】

ぐぐ……


【木こり】

弱いんならしかたないべ

おらにまかしとけ


【魔王】

うう……

なんという屈辱……


【木こり】

よっこいしょ!


さあ、木をどかしたべ


【魔王】

おい、木こりよ


【木こり】

なんだべか?


【魔王】

本当に、魔王の噂、聞いたことない?


我、魔王なんだぞ?

世界を支配してたんだぞ?


【木こり】

ああ、聞いたことないべ


【魔王】

そうなんだ……


【木こり】

おい、なんで出てこないんだべか?


おっさんがヒザ抱えて座ってよお


【魔王】

しばらく一人にしてくれるかな?


あと、数千年くらい……


【終わり】

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封印の魔王と田舎の木こり 森水鷲葉 @morimizushuba

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