第5話 ドラキュラさんは早く帰りたい

「有難う御座いました..」

結局此処に戻ってきたか。

どうせ意図せず面倒な客が訪れて困惑する展開だと思っているだろ?


「知らぬだけで毎日面倒な客は来てるわ!」

アクティブな奴はアクティブな処に居続ければいいものを、静かな部分に干渉しおって。

「はぁ〜最悪っ!」「うおっ..」

前触れ無しか、いらっしゃいませも言いそびれた。

「別れたって言ったのに!」

またお前か、なら何故電話に出る。

「もう知らない!

アドレスも削除してやるんだから!」

するつもりないな?

明言したら消さない意思表示だよな?

「ていうか早く帰れ..。」

『プルルル!』

「何、また掛けて来る訳?」

どうせ出るんだろ、いつまで八和音なんだそれで。


「もしもし?

しつこいよ別れたって言ったじゃん」

ほら出た、お互いレスポンス数は同じだぞ掛けて出てるからな。

「待ってって何..え?

今から行くってここ家じゃないし!」

「家に行くがいい」

帰れ、早足で帰れ。振り向くなよ?

「何処って..ドラッグストアだけど」

言うな!何故言う⁉︎

処方する薬は無い、何せ馬鹿だからな

「わかった、待ってる..。」「は?」

今何て言った?

彼氏をここで待つだとふざけるな!

「……」何をしている?

「………」え、どこ見てんの?

「…………。」天見て思い馳せるな!


「店員さん?」「..はい?」

「私に聞く薬、あるかしら。」

「...病名は?」

「恋煩いです、ウフッ!」

..眼球にメンソールを塗ってやろう。

「彼氏が着く頃には涙が止まらないだろうさ」

別れたら男を紹介してもらえ、その手に関心の深いスケベな女がウチに一人いる。

「丁度フランケンが空いてるぞ..」

がっしりしてて、学生時代はラガーマンだったらしい。

「力がデカすぎで、退部させられたらしいがな」

今は何の時間だ、よく知らん女の男かま来るのを待つ時間か?

「大変ですね」「まったくだ何故..」


「お前何だ急に。」「こんばんは」

また化狐だ、なんだコイツ。マジなんだコイツマジで。

「相変わらず夜勤ですか?」

「昼働かせて治療費を踏んだくろうってか、ヤブ医者め」

「そんな事する必要ありませんよ、何せ引く手数多なので。」

「……ふん」

嫌な奴め、コイツと仲良くする日は絶対にないな。する気もないが。

「でなんだ、何を探している?」

望まずともお前は私の糧となるのだ、さぁ薬を買え、ふはははは!

「生憎ですが今日は財布は持っていなくて、お力にはなれません。」

「なっ..⁉︎」

またからかいに来たのか、おのれぇ!


「代わりといってはなんですが、トマトジュースを置いて行きますね。」

「..トマトジュース?」

それに4本も、なぜこんなに。

「纏め買いしたまでは良かったのですが口に合わなくて、余って勿体無いと感じていたところ貴方の存在を思い出しましてね」

「...ほう」

要は処理に困るから都合の良い奴に擦ろうと言う事か。

「敢えて何も言うまい..」

「口に出したら言っている事になりますけど、ではさよなら。」

何言余計なのだアイツは!

..四本か、確かにストックは切らしているが。


「多いのだ、少しな」

母親や知り合いが好きだといったものをあるだけ買ってくるが違うのだよ。

当然有難いが2、3本でなければこう、

〝そう言う事じゃないんだ〟感が漂い始めるのだ。

「適度な摂取量を超えると大口になる好きってそう言う事じゃないから」

医者なのにわからんのか、滑稽よぉ!

「まぁ普通に助かるがな。」


それよりもあの女だ、いつまでそこにいる?

「何かお買い求めですか..?」

「え、あっいえ!」

頑なに動かんか、早く帰れ。深夜に恋愛沙汰を見たくないのだ!

「もう、恋は嫌なのだよ..。」

思い知らされた、私の武器は牙のみなのだと。

「私の話はいい」

いい加減帰れ、さもなくばにんにく料理を十字型のフォークで食べさせながら横で聖書を朗読するぞっ!


「...これ、全部私の思い出だ..。」

忘れろ、過去の話だ。

「トマトで濁した聖水の逆流だ..!」

気を病むな、誰だお前は?

オレは、ドラキュラなんだぞ?

「あ、来たっ!」「漸くか..」

さっさと連れて帰れ、こんな処に立たれては気やら態度が散って散って...!


「由美子!」「ジョージくん!」

あのかまいたち由美子って言うのか。あいてがジョージってお前。

「一体どういう顔した奴なん...」

「由美子!

行くな、お前が好きなんだよ!」

おいおい嘘だろ。

「何よ、別れようって言ったでしょ」

「一度離れて分かったんだ、やっぱりお前が必要なんだよ!」

クサイクサイ、お前臭うぞ?

「嬉しい..!そんなに私の事!」

正気か貴様、よりによって付き合う相手がお前か?


「ああ、皿にヒビが入ろうとお前を守る。一緒にいてくれ!」

カッパアァアァ!!

またお前なのかゴラァ!?

「..はいっ。」

次来たらお前ら二人の二の腕に明太子のタトゥーを掘ってやる...。

                完



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ドラキュラさんのメリットは何処  アリエッティ @56513

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