第3話ほしいのは実銃であってトレーニングガンじゃない
「・・・・・・・・・・・・・・らぁ!」
遠くから声が聞こえた気がする。
「・・・・・・・・・・・・・・いのよ!」
呼びかけられている・・・?
「せっかく森守り奉行になったてのにこんなのないよ!」
うるさいなぁ・・・
「もう・・・こうなったら埋めちゃうかな・・・」
殺気を感じた、というのだろうか。私はとっさに上体を起こして
「「痛っ!」」
私の顔を覗き込んでた女・・・というより少女の頭に私の頭がクリティカルヒット。激痛。異世界に来てから私ずっと体のどこかしらが痛い気がする。
「生きてた!生きてたよ!」
少女は泣きながら私に抱きついてくる。うん、悪くない状況である。至福である。
「ところであなたは誰?同じ言葉を使うってことは人間でしょ?」
「え、ええ。そうよ」
人間以外の者がいる世界ならではのコミュニケーションである。
「どこの国の人?もしかして同じキストルの人?」
どうやらここはキストル人である方がよさそうだ。
「え、ええ、そうよ。私はキストル人」
「おお!それは良かった。じゃあさ、貴女に質問なんだけど・・・」
「なにかしら」
少女は奥のほうにある光る塊・・・私が錬成した金塊を指さして、
「なんであれを私に投げたの?というかあれはどこから持ってきたの?」
痛いところを突かれた。いや突かれない方が逆に怖いが。
「ああ、私が錬成したのよ」
そう言うと、少女は目を丸くして、
「もしかして、貴女錬金術者!?」
錬金術者ってもしかして貴重な人材なのだろうか。
「ええ」
「だからこんなところにいたのかぁ~納得だわ」
何を納得したのだろうか。
「じゃあ私の家にかくまってあげようか?」
かくまうとかなんか不穏な雰囲気だが少女の家にしばらくいられるのはありがたい。
「いいの?」
「うん。私の姉が錬金術師でね、その苦労が少し分かるの」
どうやら錬金術師は大変な職業なのか?謎が多すぎる。
「そうだ、あなたはどれぐらいの錬金ができるの?」
「どのぐらいって?」
「たとえば・・・物質を錬成できるとか道具を錬成できるとか。貴女はあれほどの金を錬成できるのだからかなり上位の術者だと思うけど」
そうえば錬成経験は金の延べ棒一本だけだ。試してみるか。吐き気が怖いが、やってみないことには始まらない。
「ちょっと待ってね・・・錬成してみる」
どれぐらい錬成できるのだろうか。どうやら私は上位の術者らしいから、なにか道具を錬成してみるか。なにを錬成しよう・・・そうだ!銃を錬成してしまおう。少女は剣を携えていたが、銃らしきものは装備していない。多分文明レベルの差であろう。ならばここで銃を錬成して、チート級の力を手に入れてやろうじゃないか。
せっかくならば自動小銃を錬成してやろう。ARライフルを持ちさえすればどんな状況でも生き抜けるってアメリカ人言ってたし。
頭の中にARライフルを詳細に思い出す。私の部屋に置いてある数々の資料、それと父の資料から思い出す。思い出してみれば英語の勉強に使えと娘に出した洋書が銃器資料の時点で父は変人であった。この資料が原因で私は世間の流行から隔離されたミニタリーの沼に沈みこんだのだ。まあ良い父であったが。
深く念ずる。銃口、銃身、レシーバー、グリップ、トリガー、ストック。すべての部品の形状を頭の中で思い浮かべる。材質は何だろうか。多分アルミであろう。ストックのお尻にはゴムを張ってみるか。
目の前にARライフルが光とともに錬成される。トリガーが純正でなくストレートトリガーなのは初めて撃ったARライフルがこのトリガーだったからだろうか。だとしたら錬金術はかなり記憶や思い出に引っ張られるのではないだろうか。ストレートトリガーは嫌いなのだが。金の時と違うのは最初からARライフル本来の大きさで錬成されたこと。それと気持ち悪さや吐き気を感じなかったこと。そして予測していない事態は、トリガーやボルトなんかが全く動かないこと。つまりアルミ削り出しのトレーニングガンを錬成してしまったことだ。
「おお!こんなに複雑な彫刻が錬成できるのですか!すごいです!こんなこと姉さんも出来ませんよ!」
少女は私を称賛してくれたが、私はこいつが彫刻になってしまったことが不思議であった。しかも今回の錬成では反動と思われる現象が起きなかったのだ。この術に対する疑問は積もるばかりである。
異世界なんて銃さえあれば余裕だと思ってました。 重い思いを抱くおもち @TVsinkan
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