江戸川乱歩作品について

サタナエル

D坂の殺人事件

『D坂の殺人事件』は、1924年(大正13年)に発表された江戸川乱歩の本格探偵小説です。

『新青年』新年増刊号(第六巻第二号)に掲載された。D坂で起きた密室殺人事件を“私”と素人探偵“明智小五郎”が追及していくという短編推理小説です。江戸川乱歩が自作に明智探偵を初登場させた記念碑的作品です。文中で心理学と犯罪の関係について触れられており、これは続編『心理試験』のテーマとなっています。

本作には古本屋と蕎麦屋が登場しますが、乱歩は作家になる前に様々な職歴があり、大正8年には、東京市文京区本郷駒込林町の「団子坂」で弟2人とともに実際に「三人書房」という古本屋を営んでいました。この古本屋で乱歩は、居候の友人と二人で推理小説の案を練っていました。事件の舞台である「D坂」とは、この「団子坂」のことです。また劇中にはソバ屋も軒並びで登場しますが、乱歩自身も蕎麦屋を経営していたことがありました。

その後も職を転々とした後、大正11年に職を失った乱歩は妻子と共に大阪府守口市八島町の父の家へ移り、「江戸川乱歩」の筆名で、団子坂時代に考案した筋書きを基に『二銭銅貨』と『一枚の切符』を書き上げました。森下雨村が『二銭銅貨』を称賛し、人気推理作家の小酒井不木にこれを渡したところ、両作品を不木が激賞したため、大正12年に『二銭銅貨』と『一枚の切符』が探偵雑誌『新青年』に掲載されることとなり、「江戸川乱歩」のデビューとなりました。

新人発掘にも熱心で、高木彬光、筒井康隆、大薮春彦、星新一など、乱歩に才能を見出された作家は少なくないそうです。





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