エピローグ<いきなりの危機!>そして伝説へ……

「逃げるのかっ」


「逃げるデショ!」


「消火するまで待ってられないアル」


「壁をぶち破りますっ」


「アイヤ、壁の向こう側に何があるかわからないアルよ」


「そろそろ死ぬっ。脱出が最優先ですっ」


「壁一枚向こうにエアポケットが……ッ、ゲホゲホ」


 一番先頭にいたジェインは煙をもろにすってしまった。


「大丈夫ですかっ」


 シャオメイがジェインを支えていた。


「ジェインはまかせるよろし。針一本、空間がつながればテレポートするアル……ッ」


 ガイは自分の役目を悟った。


「気合い、入れますッ」


 激しい爆音。人が大手を振って通れる大穴があいていた。奥に確かに通路が見える。


「アイヤー、針一本で良かったアル……ゲホッ」


 ほこりにむせこんでいるシャオメイに、ジェインを預けて、ガイはきびすを返した。


「ジェインをお願いしますっ」


「ガイは……ッ?」


 穴の中から壁面にてのひらをあてている。


「サイコ・シールドを固定してます。はやく逃げてっ」


 目には見えないシールドの発動とそれを維持するには触れていないといけないらしい。


「逃げる時は三人一緒アル!」


 シャオメイが全力でガイを壁からひっぱったが、彼は微動もしない。


「シャオメイさん、あなたはやさしい。……やさしすぎる。なればこそ、はやくっ」


「何、カンチガイしてるアル。全員一緒でないと逃げられないヨ! これはしくまれた巧妙なワナアル……!」


「シャオメイさん、ありがとう。もっと、あなたと話してみたかっ……ッ」


 ドンッという音がして、爆風がガイのてのひらを圧したが、ガイは微動だにしない。


「ガイ、そこまでして……どうしてッ」


「あなたを尊敬しています。どうか……自分を立ててやって下さい……」


「ッ……さよならは……言わせないアル……ッ!」






 ヨシュアは驚きっぱなしだった。


「人はなぜ愚かなあやまちをくり返す……!?」





 ジェインは目ざめたとき、かすかにレモンの香をかいだ。


「ジェイン、眠っていたところ悪いアルが、出番ヨ」


「封印が……!」


「肉体と精神の両方を底上げしたから、今なら本来のパワーがひねり出せるはずアル。できないなんて言わせないヨ」


 いつかの風景が、ジェインの脳裏をよぎった。


 よかれと思い、ふるった能力で友だちを傷つけ、泣かせてしまった。


 幼い時の、古い記憶。


「ミーは、みんなを守るヨ……もう、まちがえない!」


「とおす穴は1ミリでいいアル」


「わかったヨ」


 胸をたたいたジェインに、耳元のつけねまで赤くなったガイが身じろぎを返した。


「アリさんパワーでいくヨ」


 ジェインの能力が花開く。


「具現せよっ、タイタンアントッ!」


「ちょっ……」


 シャオメイが青ざめる。


「超巨大アル……」


「えへへッ。アリさん、よーしよし!」


 そのアリは体高だけで、最年長のシャオメイの2倍はある。


「さあ行くヨ! アリさん働け――」


 巨大なアリは容赦なく壁に穴をあけた。


 強いアゴで軽く10メートルは掘り進めた。


「この調子だと1ミリの穴をとおすのにどれだけかかるかわからない。ガンガンいくヨ――」


「ジェインはモンスター使いだったアルな。心臓に悪い……」


 掘り進めた先に、わずかばかりの空気が通った。


「シャオメイ!」


「よしきたアル」


 シャオメイはガイの首根っこをつかみ、巨大アリにしがみついているジェインをつかまえて、テレポートをした。


 ガイがサイコ・シールドでふさいでいた穴から火炎がうずまき、周りは爆風に巻かれた。






「金龍に乗って逃げることも、最初の部屋へ決まってにげこむパニックにおちいることも、悲嘆にくれることもなく外界に<スター・グリーンに>降り立った……ルール丸無視?」


『ヨシュア。我々の神の時代は終わったのかもしれないネ』


「これも新時代の潮流でしょうか」


『どちらにしても見守ってやらねばと思うよ』


「ていうか、楽園はもう要らないのでしょう……彼らにしばらくまかせてみます、お父さん」


『地上に増えるまで、我々は次のステージで待っているとしよう』


 ヨシュアは喜ばしそうだ――


『よくここまで我々を信じ、今まで尽くしてくれた――次はおもしろい余興を用意しておこう』


「彼らチーム・ガイア、いやスター・グリーンプロジェクトチームは、全遺伝子バンクの記憶を失い、新時代の歴史をつむぎだす――宇宙の神話として――」






「ジェイン。マイネームイズ ジェインミーの名前はジェインヨメイ・アイ・ハブ・ユア・ネーム、プリーズご芳名をうかがってもよろしくて?」


「ガイ。アイム、ガイ自分はガイです


コールミー、シャオメイシャオメイって呼んでウェア・ディッジュー・カム・フロム出身はどこアルか?」


 記憶なんてない。だけど――伝説は今、始まる。


「「「ナイス・ミーティング・ユーはじめまして!」」」




 ―END―






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

『スター・グリーン』プロジェクト れなれな(水木レナ) @rena-rena

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ