2 貴金属不足の国
巨大な城壁に囲まれたウェーノル国は、長きに渡り、豪華絢爛な王侯貴族たちの富への渇望を満たすため、世界各地から、無数の宝石や鉱物類を集めていた。
ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、サファイア、ガーネット、アクアマリン、アメジスト、トパーズ、オニキス、ターコイズなど、貴重な宝石や鉱物なら、ウェーノル国は、何でも取り寄せた。
そのために、国が幾ら財産を浪費しようとも、大きな問題にはならなかった。
ウェーノル国の歴代の諸王は、大昔から繰り返されてきた、この習慣を止めることなく続け、壮大で美しい世界を作り上げた。
世界中を見渡しても、ここまで煌びやかで、心が躍りたくなるような、優美な国は存在していなかった。
現在、輝かしいウェーノル国は、シンバドゥルという名の王に統治されており、依然として、世界各地から宝石や鉱物などを集めていた。
この偉大な国の王の悩みは、輝く無数の宝石や鉱物の量に比べ、金、銀、プラチナなどの貴金属類が、極端に少ないことだった。
そういう状況のため、ウェーノル国は、世界各地で金、銀、プラチナに対し、異常なまでの高値を付けて取引をしていた。
また、希少な貴金属類を手に入れるためには、危険な銀山や金山に入らねばならず、屈強な戦士が求められていた。
やがて、シンバドゥル王の命令の下、ウェーノル国を始め、世界各地には、銀山や金山を攻略するための部隊の召集令状が送られた。
当然のように、その部隊に志願すれば、大きな富を得ることができた。
一連の任務は危険だったが、煌めく王国の莫大な富を求めて、次第に世界中からは、勇敢な志願者たちが集まり始めた。
その志願者の中には、ウェーノル国とも親睦の深い、東のピガール国の戦士や、近隣のビーザル国の魔術師などが含まれていた。
かくして、王の求めた屈強な戦士や魔術師たちが、ウェーノル国の高い城門の前へと殺到した。
王の命令を受けた軍団長ヴァルボッサは、仲間の兵士たちと協力して、城門へと集まった志願者たちの力量を見極めようとした。
しかし、予想以上に志願者が多かったため、より名声が高く、これまでに英雄的行為を達成した人物を厳選することとなった。
その結果、軍団長ヴァルボッサは、ピガール国とビーザル国から、最も優れた二人の志願者を選んだ。
詰まるところ、ピガール国の英雄ハーザントとビーザル国の大魔術師ネメシスが、銀山・金山の攻略部隊に加わることとなった。
このようにして、無事に目的を果たしたヴァルボッサは、直ぐに王の元へと急いだ。
大規模な階段を越えて、王のいる豪勢な宮殿の扉を開けると、早口で目的を告げた。
「王よ。今しがた、我々は強力な味方を手に入れました」
宝石が散りばめられた王座に座ったシンバドゥル王は、軍団長の知らせを聞くと、髭だらけの口元を緩めた。
「良くやったぞ。我が忠実なる兵士よ」
「直ぐに部隊を再編成し、銀山及び金山の攻略へと出発せよ」
「分かりました。偉大なる王よ。必ずや、この国に銀や金を持ち帰ってみせましょう」
軍団長ヴァルボッサは、自らの君主にそう告げると、深く一礼した後、再び重大な仕事へと戻っていった。
異世界でシルバーアクセ売ったら、メッチャ儲かった。 村田ミチヨシ @muratamitiyoshi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界でシルバーアクセ売ったら、メッチャ儲かった。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます