◎エピローグ 地獄の沙汰も彼女次第
それから数日後。
『いいことをしましょう部』部室では、『これからの善人増加計画』についてケンケンガクガクのやり取りが行われていた。
「……ダメだ、まるで考えがまとまらない」
疲れ果てたマコトが机に伏せる。
「会議中に寝る奴があるか!」
ガツン!
キョウカの鉄拳が脳天を打ち、マコトは床の上にドタン、と倒れこむ。
「寝てないって! さっきから俺に喋らせてばかりで、お前も何か考えろよ!」
「私は後でいい」
「後がないんだ、今言え!」
「後でいいと言ったら後だ!」
そんな二人のやり取りを、エマが静かに見ている。
「はい、二人とも騒がない。私はマコトの『駅前クリーン作戦』に賛成よ。あそこは人通りもあるし、何かと注目されるわ」
珍しく、エマがマコトの意見に賛同する。
「そうですか? 華のない作戦だと思うのですが」
「華がなくて結構よ。地道に頑張ってこそ、だわ」
やはりエマはほんの少しではあるが変わったな、とマコトは思った。そして、そんなエマが自分のイトコであることがいまだに信じられないでいた。
『どうなるのかな、これから……』
この先どんなことが起こるかわからないが、とにかく自分は自分の与えられた使命を全うしていくしかない、とマコトは思っていた。
善人を増やし、エマを守る……なかなか退屈しない毎日だ。
「じゃあ、さっそく用意にかかりましょう。もし成果が出なかったら? その時は燃料を満載したタンクローリーを駅前に……」
エマがさわやかな顔で、さわやかじゃないことを言った。
そして……。
バタバタと無数の旗がはためく地獄の荒野にぽつんと人影があった。
黒焦げになったメズナが、ふらふらとさまように歩いていたのだ。
「……まだよ、この旗がここにある限り、私はまだ、やれる! 冥府の王とその息子を使って、私は……今度こそ地獄の覇者に!」
自信に満ちた顔で、決意を新たにメズナが拳を固めた。
だが、黒焦げでその表情は分かりにくかったのもまた、事実だ。
おわり
とはいえ、地獄はヘルのかな 馬場卓也 @btantanjp
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