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短編・蟲の宿

蟲の宿 短編

 夏の思い出です。

――――――

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890756475

「夜の山に広がる恐怖の触肢しょくし


小学五年生の夏、私は山間の宿に泊まった。

作者の記憶を概ね忠実に綴った、生物が織り成す恐怖の物語。

何かが蠢く陰翳いんえいは、あなたの傍にも…。

――――――


 この作品は私が初めて書いた、現実を舞台にした短編です。これ以前はセプテムベールファンタジー以外には猫のローファンタジーを一作しか書いたことがなく、またセプテムベールファンタジー以外を書くつもりもありませんでした。


 この作品を書いてから、その姿勢に変化が生じました。


 蟲の宿を書くきっかけを作ったのは友人でした。二人で旅行に行った時、ふとしたきっかけで私は彼女に十歳の頃に経験した「蜘蛛温泉」の話をしたのです。すると彼女はこう言いました。


「なにそれ、ホラーじゃん」


 そっか、ホラーなのか。妙に腑に落ちた私は、家に帰るなり猛烈な勢いであの日の体験を書き上げたのです。


 やはり怖かったのでしょう。書き始めてみると、あの日に見た映像が次々と頭の中に浮かんできました。ただ、印象的な場面は絵として頭の中に浮かんでいるのだけれど、絵と絵の間の出来事がうまく思い出せない。


「普通は散歩する前に温泉には入らないから、このタイミングで温泉に行ったのかな……?」


 とか、そんな風に推理しながら絵と絵を繋ぐ作業でした。


 つまり、本作はエピソードの順番に不鮮明な個所があるものの、各エピソードは全て実際に起こった出来事なのです。きわめてノンフィクションに近いホラー小説です。

 実話だけにさほど深刻な事態は発生せず、生き物大好き!という人にはホラーにならないのではないかと不安でしたが、「怖かった」という称賛(?)を多数いただいております。良かった。


 本作をきっかけに、私はセプテムベールファンタジーではない作品も書くようになりました。作者の実力を大きく底上げした、飛躍の一作でございます。

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