コミカル、それでいて胸がいっぱいになる。こんな、一粒で二度美味しいみたいなお話を読めるのがしあわせでした。
トラックに轢かれて異世界転生を「トレンド」といい「予習」と表現されるあたり、異世界転生のテンプレートが面白おかしく描かれています。web小説でたくさん見てきた異世界転生にかかる流れを、お役所を彷彿とさせる課の回しかたでユニークにしてしまう。お役所仕事をしてる方には申し訳ないのですが、あのたらい回し感と「個人情報ですので」という縦割り感、妙に親近感があって腑に落ちました。こんなに異世界転生モノで溢れていたらあんな事務処理みたいに流されていくのもアリかもしれない。
という大まかな異世界転生の流れに面白さを感じつつ、最終的に心臓を鷲掴みにしたのは愛妻へのこだわりです。その辺は読んで頂いてこそ伝わるものかと思うので詳細は差し控えますが、読了前後では印象が大きく変わる小説でした。
婚姻届を出した直後、夫婦そろってトラックに轢かれてしまった。気がついたら異世界のお役所で、お役所仕事感満載な手続きの末『勇者』に転生した主人公。しかし待て。一緒に轢かれたはずの妻がいない。妻は! 俺の妻はどこだー!
というわけで(?)美女も魔王もそっちのけ。転生の際、強制付与された駄女神を連れて主人公はひたすら奥さんを探して異世界を旅します。はたして奥さんとは会えるのでしょうか……?
きっちり1万字。クスッとほっこり、ちょっぴり切ない異世界ファンタジー。え? 異世界転生? なにそれおいしいの? というレベルのわたしでも楽しく読めました。
よく言われることですが、テンプレ異世界転生モノを料理に例えるなら定食屋の定番料理。「生姜焼き定食が食べたい」と思えば想像通りの生姜焼き定食が出てくる。それがテンプレです。
ですが、その生姜焼き定食が期待以上に美味しかったらどうでしょう?
この作品はそんな感じで愛妻家のおっさん主人公がトラック転生し、勇者としての使命とチート能力を与えられ、ハーレム要因の美少女たちと出会ってラッキースケベなトラブルに巻き込まれ……るところを全て拒否し、魔王も無視し、ただ一人の相棒の駄女神様とともに愛する奥さんを探して今日も旅する。
果たして奥さんは見つかるのだろうか……?
大体は想像通りのお話なのですが、読みやすいライトな文体でサクサクと物語が進行しつつ色々なところに笑いどころや伏線が隠されていて、最後に明かされる女神様の独白に思わずニンマリしてしまう、見どころたくさんの楽しい作品です。
夫婦揃ってトラックに轢かれたはずが、転生したのは俺だけだった────!?
テンプレの異世界転生をモチーフにした本作は、結婚初夜を迎える前に転生で嫁とはぐれてしまった男が主人公。
やっつけ感満載の異世界ハローワーク(的な?)でのやり取りは、作者様お得意の軽妙なコメディで楽しく進んでいきますが、肝心の嫁はなかなか見つからず……。
読み手としても嫁の行方が気になりますが、そんなドタバタの中でキラリと光るのが、主人公の彼の嫁に対する一途な愛情です。
チートを与えられ、強制オプションの女神もついて、俺TUEEE&ハーレムでウハウハできるはずなのに、魔王討伐も後回しにしてひたすら嫁を探し続ける主人公。
彼は嫁と出会えるのか、それとも諦めて女神とくっつくのか。
相手を思い続ける心の美しさが胸を打つ、楽しいながらも素敵な短編です。
何、これ? 面白〜い♪
トラックによる轢死転生を果たしたダメ勇者様が、妙ちくりんな異世界職業安定所(?)で、お役所対応されながらも、スキルと駄女神様を付与されて旅に出るのですが……。
ダメ勇者様は、一緒に轢死転生したはずのお嫁さん探しに没頭し、異世界職安(?)の職員たちは、揃いも揃って残念な人(?)ばかり。
駄女神様は、禁忌を侵して、女神資格を剥奪された模様で……。
ダメ勇者様のパーティーに入ろうと、色仕掛けやら何やら仕掛けてくる美女冒険者たちもひっきりなしという。
全ての登場キャラクターが、自らの仕事に対して、『真面目で誠実』とは言えないのです★ まったく、もう。
みんな、ちゃんと仕事しようぜ!
では、この物語は単なるコメディかというと、さにあらず。
ほろりと泣かせてくれるのです。
この勇者様、すげーぜ! あらゆる異世界転生勇者の中でも、最も強靭なハートを持っているんじゃないかな?
女神様の健気さにも、涙がちょちょぎれます。よよよ。
この夫婦愛は、世界最強かも💖
この物語、作者の宇部 松清先生だけが、しっかりご自身の仕事をなさってます☆ この短い小説で、存分に笑わせ、泣かせてくれるとは。
お見事でございます🌟