【カーテンコール】影山時雨 × 朝霧リタ


 ステラバトルを終え、普段の日常が戻ってきた。決戦前と同じように時雨の家を訪れるリタ。見慣れた風景も、闘いを経た今となってはどことなく愛おしく感じる。


リタ:「ねえ。時雨は不安じゃなかった? 私とのステラバトル」

時雨:「ううん、不安だなんて全然。一緒にいてくれてとても安心しました。終わったらクレープ食べる約束もしていましたし、ね?」

リタ:「ほら、私がうっかりして時雨が怪我しないかなって」

時雨:「どちらかというと、その台詞はリタじゃなくて私の役割じゃないですか、ふふっ。リタに怪我をさせてしまわないか心配だったのは事実でしたけど、それでも一緒にいて、一緒に闘ってくれた、その安堵の方が大きかったんです」


 らしくないですよ、と笑いながら机の上の減ってきた菓子入れに煎餅を補充する。ステラバトル自体には慣れていたせいか、終わってみると始まる前よりも落ち着いている時雨。初めてリタと挑んだ舞台で満足のいく闘いができたことが大きいのかもしれない。


 リタはなるほどね、と答えて微笑む。自分たちがすばらしいペアだと証明してみせる舞台として、ステラバトルへの導きがあったのならば、なんて幸運なんだろうと思った。

 あの日なんとなく時雨に声をかけたときから、ステラバトルまでが私たちのひとつの区切りなんだろうとリタは感じていた。多分もう時雨に手を差し伸べる必要はない。あとは彼女がその手を差し出すのを待てばいいだけだ。


リタ:「これ、こないだの写真?」

時雨:「そうそう! よく撮れてるでしょう? これから初めてのステラバトルに臨むという記念すべき1枚ですよ」


 コルクボードに貼られた新しい写真を指さすリタ。それは、ショッピングモールのきらきらした飾りつけと行き交う人々を背景にして、三段のアイスをこぼしそうにしながら撮った二人の写真だった。


時雨:「リタが声をかけてくれた時から私たちの『今』は始まっているのですけど、その『今』に転機が訪れた、そんな転換点の大事な大事な記録です……あ、そうだ。ステラバトルが無事終わった記念に、今の写真を残しておきませんか? 私の部屋だとあまり華やかではないのがあれですけど……」

リタ:いいね、と笑顔で答える。コルクボードがいつもきゅうきゅうになるくらい、私たちの今を残していけばいい。

時雨:「じゃあいきますよ、はい、チーズ!」


 二人の『今』がこれから徐々にコルク地を埋め尽くしていく。これはその始まりの出来事。常に更新され続けることになるそれは、大切な『今』の、二人の『今』の記録そのものだった。


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