チン毛に白髪が混じっても

湊 ヒナ

プロローグ

あ、あぁ!

ついに、ついに来たか。

ついにこの時が来てしまった。

小学生の低学年頃からちらほら髪に白い毛が数本、20歳を超える頃には黒髪が大半を占めてはいるが、白い毛の本数は数えるには多過ぎるくらいになっていた。

若白髪という言葉は若いのに苦労している、頑張っているという話とセットで使われることが多い。

小さい頃から度々そういう言葉を掛けられたりした。

しかし実際問題、私は大して何を頑張った記憶も無ければ、特別何かに苦労した記憶もない。

むしろ私よりハードな人生を送っているであろう私の周りの同年代の奴らは皆白髪など1本もなく、まだまだ好きな髪型を楽しんでいる。

私もさほど白髪が多いことについては気にしていない。

しかし今回のこれは別だ。

小さい頃から白髪が多かったので身体が成長するにつれて、いつか来るとは覚悟していた、しかし何事もなく時は流れて、そんな覚悟も気持ちもあったかどうか薄れ薄れていたが、しかし見つけてしまった。

しっかりと分かる、太く逞しい黒いちぢれ毛の束の中に1本キラリと光った白い毛が、トイレに座って下半身をさらけ出し首だけ下を向きながら、ソイツを凝視する。

「マジか…」


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チン毛に白髪が混じっても 湊 ヒナ @kanaai

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