第14話

 走りながら刀をしまい、外に向かって走っていきマンションの外へと出る。

 先に逃げていた莉沙に追いつき、車を止めた場所に向かって走る。

 その後ろからは先ほどの化け物が追いかけてきているようだ。

 必死に走り、化け物と一定距離を保ったまま逃げ続けている。


「いったい何なのよあれ?」


「さぁな。俺にもわからないよ。あんな生物見たことないぞ」


「今はとにかく逃げましょう。あんな訳の分からないものに捕まるのはまずいですし」


 追いかけている化け物が何なのかは、ここにいる全員わからないだろう。

 すると突然、逃げている途中で冬月ががれきに躓き体勢を崩してしまい、化け物に追いつかれそうになる。


「……冬月!」


 俺は咄嗟に冬月の腕を掴み何とか体制を維持させ、そのまま走り続ける。


「あ、ありがとう……ございます」


 冬月の礼に対してうなずく。

 さらに走って逃げていると、どこかから「こっちだ!」と叫ぶ声がした。

 声のした方を見ると、そこには男の人が建物のベランダからこちらに対して腕をふり叫んでいるようだ。

 全員急いで曲がり、その男の人がいた家へと駆け込んで行く。

 化け物たちは俺たちを見失ったのかどこかに飛んでいくようだ。

 全員、玄関で息を上げつつも無事に逃げ切れたことを喜ぶ。

 階段の上から男の人が下りてき、声をかけてくる。


「あんたら大丈夫だったか?」


「あ、ありがとうございます」と莉沙が深々とお辞儀をする。


「し、死ぬかと思った…」と少々顔が青ざめている冬月が壁にもたれかかっている。


 俺も平静は保っているがさすがに応えているようだ。

 少し落ち着き、その男を見ると血の付いたシャツを来ており手袋をはめている。


「ありがとうございます。あなたのおかげで助かりました」


 俺が言った後に「あなたの名前はなんているのですか?」と莉沙が続ける。


「俺かい? 俺の名前は野島啓二のじま けいじだ。君たちはどうしたんだい? なぜこんな街に来たんだい?」


「あ、申し遅れました。自分たちはこういうものでして」


 そういうと内ポケットから警察手帳を見せる。

 俺に続いて座り込んでいた冬月も警察手帳を取り出し見せた。


「刑事さんでしたか。それはご苦労様です。そちらの大柄な女性は?」


 今度は莉沙の方を見て尋ねる。


「私は鍛冶師をやっている霧崎莉沙です。」


 野島はやや不思議そうな表情を浮かべている。

 まぁ鍛冶師なんて言われてもなぁ。


「そうだ、野島さん、でしたか。さっきの化け物について何かご存知ですか?」


「あぁ、さっきの化け物かい? 俺も何回か会ったよ。二、三回はみたかな。今となっては上手いこと撒けるからなんともないけどな。最初見たときは驚いたよ。必死に逃げたからいろんな道通ったり色んなものを蹴ったりと大変だったねぇ」


 野島は笑いながら俺たちに話す。


「なりふり構わず走ってたからゴミの臭いとかがうつっちゃったよ」


 俺の見立てでは野島という人物はこういう軽い人なんだなと思った。


「それはそうと、霧崎さんはどうして男の人たちと戦ってたのですか?」


 俺も気になっていたことを冬月が聞く。


「ええっと、話せば長くなるんだけど……」

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闇夜に蠢く挑戦状 大和ラカ @raka8rio

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