なんとなく
白櫻詩子
なんとなく
「チーズケーキのツルツルの切れ目とデコボコの断面とどっちが好き?」
「うーん…キチッとカットされたツルツルの断面の方がいい。かな?」
君の得意なよくわからない質問にとりあえず答えて"なんとなくだけど"と付け足した。
「そっかぁ! なんとなく!なんとなくっていいよね!!」
なんとなくって言葉一つとってこんな反応があるとは。彼女への発言はよく考えて丁寧にせねばな。普段から失言の類のものはあまりしないつもりだが、そんな事が頭に浮かぶくらいに話半分な僕に彼女は"なんとなく"について熱弁する。
「"なんとなく"って事はだよ?明確な理由や決め手は無いのに何故かそれがいいと感じてるって事だよね。ある種直感や本能的に惹かれているって事だよね。ロマンだよね…」
ちょっとわかってちょっとわからない。
ふふっロマンだねぇ〜 なんて嬉しそうに言いながら、コーヒーの泡をかき混ぜる君の中でこの話のブームが去ったところで少し気になっていたことを聞いてみる。
「ねえ、なんで今日わざわざお茶になんて連れ出したの?明日試験が終わるんだから明日でも良かったんじゃ…」
一緒に勉強するでも無く、と続ける僕に相槌を打つ様に、んー?と上機嫌に考えるそぶりを見せ適当な返事をする君。
その答えは無自覚か?
淡い期待と無駄な深読みが錯誤する脳内で、いつか得意の確信めいた笑顔でもう一度同じことを言って欲しいななんて思ったのだった。
なんとなく 白櫻詩子 @shrozakura_utako
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