side:リディア
◆リディア
キース対セレナの試合が始まった。この2人はライバルとして注目されていた訳だが、いざ始まったらセレナの方が一枚上手だった様だな。
「ふむ。あのセレナという生徒は優秀だのう。どうじゃ、リディア殿?お主の生徒は彼女に勝てそうかのう?」
今日の私は国王の護衛として国王の側で試合を見ている。国王にそう聞かれて私は少し考える。
「どうでしょう?私の生徒も優秀ですが経験の差がありますからね。少し部が悪いかも知れません。」
ミーナならいい試合をするだろうが、複合魔法は厄介だな。しかも、複数詠唱はまだミーナには使えない。私がそう考えていると隣のバカが文句を言う。
「俺のミーナが負けるわけないだろ!ミーナが一番凄いんだからな。優勝するのはミーナに決まっている。」
隣のバカ。ミグルがそう言って私を睨む。この親馬鹿はミーナしか見ていない。国王も隣で苦笑いしている。
ミグルが何故ここにいるかと言うと、国王が護衛として連れて来たからだ。国王には何か起こる可能性があると伝えてあった。なので、信頼してるミグルを頼み込んで護衛にしたらしい。ミグルも流石に国王に頭を下げられては断れなかったらしい。
「どうやら、このままセレナの勝利で終わりそうですね。」
セレナの魔法がキースに当たった事で終わりを確信する。だが、少しすると無傷でキースが現れた。
「ほう。あの攻撃を無傷とは。あのキースとやらも優秀だのう。」
国王がそんな事を言うが、あれは違う。キースの持っている杖が光っている事から杖が結界を張ったのだろう。魔道具の使用は大会では禁止されている。セレナがキースの反則を審判に訴えている。
「すみません。少し行ってきます。」
周りの観客も騒ぎだした事で事態を収める為に私は舞台に向かおうとする。一応、今大会の責任者は私だ。こういう時は面倒だが動かなければならない。だが、私が動こうとしたその時、セレナと話していたキースが何かを取り出した。
キースが取り出した物を見た時、間に合わないと思った私は思わず叫んでしまう。
「まずい。それを使わせるな!」
私の声に驚いたセレナと審判が私を見るが、今はそれどころではない。私を見ずにキースを止めてくれ。だが、私の思いは届かずキースがそれを発動させてしまう。
キースが取り出した魔道具から闇が溢れだし、その中から複数の魔物が現れる。現れた魔物に会場がパニックに陥る。何人かの生徒や教師が現れた魔物と闘い始めている。
「おい。あの魔道具はなんだ?知ってるのか?」
一旦、国王の所に戻った私にミグルがそう聞いてくる。国王も周囲を警戒しながら私を見る。
「あれは、かつて魔族が魔物を召喚する為に使っていた魔道具だ。過去にあれと同じ物が使われていた。ただ、あれは過去の遺物だ。それほど魔物を召喚する事は出来ないだろう。先程出てきた魔物で終わりのはず。」
100年程前の勇者がいた頃に魔族が街を襲う際に使っていた魔道具だ。何処で手に入れたのかは分からないが厄介な事をしてくれた。
「ナダル国王は騎士達と居て下さい。あれぐらいなら私とミグルで十分です。まだ何か起こる可能性もありますので注意して下さい。」
私はそう言ってミグルを見る。国王も頷いてくれたので魔物の迎撃に向かおうとした所で街の方から爆発音が聞こえてきた。
「今度は何だ!?」
国王が爆発音に驚き街の方を見る。街からは黒煙が上がっていた。まさか街にも魔物が現れたのか?キース1人の仕業ではないだろう。まさかこれがアンディーから聞いていた計画とやらか?
私が考えているとレーン帝国学園の校長が近付いてくる。
「リディア様、これは一体!?キースは何をしたんですか?こんな事態を引き起こすなど一体何を考えているんだ!」
名前は何だったか?レーン帝国学園の校長はそう言って頭を抱えている。この様子からして校長は何も関係ないんだろう。すると校長の後ろからレーン帝国の貴族らしき男が近付いてくる。
「校長。この様な事態になっているのだ。頭を抱えていないで動きたまえ。無能は無能なりに役に立ってはどうなんだ?」
男はそう言ってレーン帝国学園の校長を睨み付ける。睨まれた校長は男から逃げる様に走り去って行った。
「ふん。役立たずの平民が。」
男はそう言って校長の方を見た後、国王の方を見る。騎士が国王と男の間に入る。
「さて、ナダル国王。この様な結果になって申し訳ないが私にもレーン帝国の貴族としての役目があるのでな。貴方には死んで頂きたい。」
男はそう言って騎士を蹴り飛ばし国王を腰に差していた剣で斬ろうとする。
「あんた、馬鹿なのか?そんな真似させる訳ないだろ。」
だが、男の剣は一瞬にしてミグルに切り落とされる。
「ほう。貴様は確か元騎士団長のミグルだったな。流石だな。」
男はそう言ってミグルを興味深そうに見る。
「こんな真似をしたのに冷静だな?あんた何者だ?」
ミグルはそう言って男を睨む。
「俺に構っていて良いのか?国王を狙っているのは俺だけではないんだがな?」
男はそう言って不敵に笑う。その時、後ろから国王目掛けて魔法が飛んでくる。
「させるか!この程度の魔法!!」
ミグルはそう言って素早く魔法を切り落とす。魔法を放って来たのは男と同じくレーン帝国の貴族らしき男達だった。その後ろには大会に出ていたレーン帝国学園の生徒が数人いる。
「我らがレーン帝国の皇帝は他国に宣戦布告をする事に決めた。その為に、まずは貴様を殺せと命じられた。皇帝は貴様の甘い考えが嫌いらしい。まあ、私も差別禁止等という貴様の考えは嫌いなので喜んで志願した訳だ。」
男はそう言って楽しそうに笑っている。
「皇帝か。確か先日、前皇帝が亡くなりその息子が皇帝になったそうじゃのう?野心家という話は聞いておったが、いきなり戦争を始めるつもりとは愚かな。」
国王がそう言って男を睨みつける。
「前皇帝は甘い御方だったからな。現皇帝は違うぞ?レーン帝国が世界を支配するべきと考えている。我らは皇帝の考えに賛成だ。我らは選ばれた人間だ。」
男がそう言って魔法を放つ。後ろからも魔法が飛んでくる。
「やれやれ。"絶対領域"!」
私は国王と周囲に結界を張る。外敵は一切入れない絶対領域。数メートルしか効果はないが結界内なら誰も手出しは不可能だ。魔法が全て弾かれる。
「賢者リディアか。貴様、ナダル国王に味方するつもりか?」
男はそう言って私を見る。
「別に私はナダル国王の味方という訳ではないさ。ただ、他の国の国王よりはマシってだけ。それに私の街で好き勝手されるのは気に入らないね。」
私がそう言って男を睨むと男は舌打ちして何かを取り出す。
「ふん。その結界は私では壊せないな。仕方ないが私は帰る事にするよ。ああ、そうだ。私の名前を教えておこう。レーン帝国皇帝直属の部隊。ケルベロスの副隊長を務めるキーンだ。いずれ再び会うかもしれないから覚えておいてくれ。」
男はそう言って姿を消す。転移石か。他の奴等も居なくなってる。どうやら無関係な者以外には逃げられた様だな。
「ナダル国王。この結界内なら安全なのでここに居て下さい。私は魔物を片付けて来ます。行くぞ、ミグル!」
私はそう言って魔物に向かおうとする。
「お前達、私の護衛は不要だ。リディア殿の援護と街の方に別れて事態を収めろ。」
国王はそう言って騎士達に指示を出す。私の方はミグルがいれば十分なので騎士達には街の方に向かって貰う。
私とミグルは手分けして魔物の退治に向かう。殆どの生徒や観客は逃げた様だが一部の残って闘っていた者達が怪我をしているので治しながら行動する。ミグルの方を見ると家族と合流しているのが見えた。だが、ミーナの姿が見えない。その時、ルナの悲鳴が私の耳に飛び込んできた。
「ミーナ!?ねえ、ミーナ!?」
ルナは血塗れのミーナを抱えていた。
死んだら○○に転生しました!! マサツカ @masatsuka
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