53 羽田さんの妹の話 夢枕に立った親戚


“庭からの訪問者”でも記したように、

羽田さんには妹が一人います。


その妹さんが体験したお話を羽田さんから伺いました。



羽田さんが故郷を離れた後も

妹さんは母親と一緒に、親戚から譲ってもらった2階建ての家で生活していました。



羽田さんが元々いた部屋は空き部屋になったわけで、姉としては妹さんに使ってもらえればと考えていたのですが、

妹さんは、その部屋を使うことに前向きではありませんでした。



その理由を聞くと

「うまく言えないけれど、

 居心地が悪い。」

そう話していたそうです。



居心地の悪さは、羽田さんが居なくなってから余計に強まったと、妹さんは常々羽田さんに愚痴をこぼしていました。


そのため、せっかく空いた部屋ではありましたが、妹さんはあまり使うことがありませんでした。



そんなある日のことです。


妹さんの夢に、親戚のAさんという方が現れました。

その人は怒った顔で妹さんを睨み続けています。



何かを言われたとか、嫌なことをされてもなく、金縛りにあったというわけではない、ただ夢に出てきたというだけなのですが、

ずっと怒りのこもった目で睨まれるので、あまり気分の良いものではありません。



常に針でチクチクと刺されているような不快感を感じた妹さんは、

この居心地の悪さが日々家の中で感じているものと一緒であることに気がつき、そこで目が覚めました。




この話を聞いた羽田さんは首を捻りました。



Aさんは家を譲ってくれた方なのですが

その人は今でも健在で、

密接でないにしろ仲が悪いわけでもなく

付き合いは良いほうでした。


「夢の中で貴方が出てきて

 睨まれたけれど何か気がかりなことが

 ありますか。」

なんてこと、本人に聞けるはずがありません。



なぜAさんが夢に出てきたのか、

何を伝えたいのか分からずもやもやと

する日々が続きます。



ただ、そんな日々は意外とあっさり終わりを迎えました。


家の掃除をした時のこと。


羽田さんが元々いた部屋の下には

半2階のようになっている空間がありました。


倉庫同然になってしまっていたその部屋を

珍しく片付けたところ、

あれだけ感じていた居心地の悪さが

一切なくなったのです。



そこは別に、仏壇や神棚など

無碍に扱って障りを起こすようなものは

何もなく、本当にただの倉庫だったので

掃除をして何故空気が良くなったのかも

良く分からないそうです。



「問題は解決したものの、釈然としない。

 すっきりしない体験です。」と

羽田さんは言いました。


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