羽田さんの話③学生寮で金縛り


九州某県出身の羽田さんが進学したのは

北陸の大学でした。


そんな彼女が進学のために入ったのは、他より比較的安い学生寮。


自分の母親より年上な大家さんとも仲良くなり、それなりに学生寮での生活に慣れてきた頃、羽田さんは身の凍る体験をしました。



具体的な日付は覚えていないけれど

北陸にしては珍しく寒くもなく、そして、

暑くもないこれといった特徴のない日だった

といいます。




値段に見合った1Kほどの狭い部屋に

押し込めるような形で設置されたベッドで

羽田さんはいつものように眠りにつきました。




いつもより疲れていたからか

その日の寝つきは良い方だったそうです。



なのに、夜中、羽田さんは唐突に目を覚ましました。




(金縛りだ。)


目覚めてすぐに感じた体の違和感。

指1本さえ動かせない強ばりに、冷や汗が流れます。


現状を把握しようと唯一動かせる眼球を動かして、まもなく、羽田さんはそれを見つけ目を見開きました。




普段は閉じられた押し入れしか見えない足元に、50代ぐらいであろう男性が立っているのです。


短髪のその男は、意思のない目で羽田さんを見ていました。



彼女は心の中で発狂し、必死に全身に力をいれて、なんとか声を出し跳ね起きました。



その時にはすでに男の姿はなく、

暗い部屋には、羽田さん一人きりでした。





元々、大家さんから息子さんがいると

聞いていた羽田さん。


息子さんとは一度も会ったことがないそうですが、あの男の顔は大家さんの面影がなく

明らかに他人だということが分かったといいます。



「その部屋には曰くも何もないところなので

 本当になんであんな男が現れたのか

 分からないんです。

 それが何よりも気持ち悪くて…。」



と、羽田さんは当時を思い出して顔をひきつらせました。



男は一体、何者だというのでしょうか。






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