第4話
高校生になって二度目の夏に私は先輩に告白をした。
少しだけ、焦っていたのかも知れない。
3年になると受験を控えた先輩たちは委員会等の放課後に行われる学校の行事に参加することはなくなる。
学年が違うので私たちは普段話をすることもないのだ。更に委員会に先輩が来なくなってから私たちが顔を合わせて話せるのは、たまに会う登校の時間のみとなってしまった。
一緒に登下校をしたいと頼めば先輩は応じてくれるだろう。だけど私がそうまでするのは絶対に変だ。告白してるようなものだ。
もう好きになってしまっているのだ。このまますれ違ったまま先輩の卒業を迎えるのなら、いっそのこと告白してしまおう。そう思った。
誰かを好きになったのは初めてだった。自分が告白をするなんて入学当初は想像もしていなかった。
人は、変わっていくものなのだろう。
初めての告白は、死ぬほど緊張した。
今でもその瞬間のことは昨日のことのように思い出せる。
ソワソワして、ドキドキして、心臓の鼓動が耳元で聞こえているように感じるほど、私の心臓が元気に騒いでいた。
告白を決意してから初めて顔を合わせた登校の時間に、私は放課後に時間を取ってもらえないかと頼んでみた。
私の様子がおかしいことと妙なお願いに先輩が少しだけ警戒の色を見せる。
「え? なにこれ? 告白されるの?」
冗談のつもりだったのだろうが予期せぬ返しに私はフリーズしてしまった。
「まぁ別になんだっていいけどさー。なに固まってんだよ? ネジ巻いてやろうか?」
私はゼンマイ式玩具ではないので当然巻いてもらうネジなど存在しない。なんとか自力で心のネジを巻いて再始動する。
「と、とにかく放課後、図書室に来てください」
私の中で図書室が告白をする場所という認識になっていた。そしてあそこは1年前に先輩が女生徒の告白を断った場所だ。そんな場所を選ぶ私は悪趣味なのかもしれない。
だけどこの時の私にそんなことを考える余裕はない。
「はいはーい」
返ってきた生返事に私は、とうとう今日生まれて初めての告白をするのだと意識する。小さく身震いをして再びいつもの通学路を歩き出す。
いつもと同じ景色なはずなのに、知らない場所を歩いているような落ち着かない通学に私は疲れたのだろう。
その日の授業の半分を居眠りと上の空で駆け抜けた。
そして、その瞬間はやってくる。
△ 詩章 @ks2142
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