第2話 寝言による1つの問題

「私と一緒にお弁当を食べませんか?」


 しゅうを昼食に誘ってくる一人の女子。


「あの〜、申し訳ありません。

 あなたは誰ですか?」



 なぜこんなことになっているのかというと、時間を遡ること10分前。


 授業がなぜか早く終わり、いい天気の昼休みという最高の時間なのでしゅうは自分の席でうつ伏せになって寝る体制になる。


「ふぁ~」


 いかにも眠そうなあくびをし、自分の腕を枕替わりにして眠ろうとしていたその時……。


「失礼します。あっいた、この前の言葉覚えていてくれたんですね。嬉しいです!」


 名前も知らないしあったこともないはずのその人は、俺の眠りをギリギリのところで妨げた。



 〜現在〜


「?、私の事を覚えていない?そんなはずありませんよね。あのとき確かに返事をしてくれました。友達からでいいですかと聞いて「うん」と答えてくれたじゃないですか。あ! 告白のことが恥ずかしかったからわざとボケているんですか?。案外可愛いところもあるんですね」


 なんのことを言っているのかを理解できない就は、妹のねむの言葉を思い出し、寝言で何か言ったのかもしれないと思い話を合わせる。


「わ、分かったよ。……あっ、ど、どこで食べようか?」


 さっき寝ようとしたせいか、眠気が少しくるが我慢する。


「やった! じゃあ外のベンチで食べませんか?。今日の天気は最高に気持ちがいいのでお弁当も美味しいですよ!」


 しゅうは、その笑顔が眩しく見えてまるで太陽のような人だと思い、眠気が吹っ飛びそうになる。


「あ、あそこにしましょう!」


 その女子が指さす場所は、暖かい風と温かいと感じるくらいの日光の当たる学内にあるベンチだった。


 しゅうとその女子は一緒にその場所へと足を運ぶ。


(俺はいったい寝言で何を言ってしまったのだろうか?ていうかいつの寝言なんだああああああああ!……は!危ないまた寝てしまうところだった)


 しゅうは眠くなりながらも、二人でベンチの所に着く。


 一緒にそのベンチへと座ったあと、しゅうはいつもなら全授業が終わった後に食べている持参弁当を膝に置き食べる。


 隣に座る女子も、かわいらしい弁当を持参していて、中身は手作りのようだった。


 気持ちのいい風と暖かな日光により、ご飯はよりいっそうおいしく感じるのだが、しゅうは今となりにいる女子の名前を聞くのを忘れていることに気づき、さりげなく聞くことに。


「そういえば、君の名前って……なんだっけ?あはははは」


「そういえば最近知り合ったばっかだし、会うのもこれで二回目だから、覚えてなくても無理ないよね。名前は矢野優佳やのゆうか


(矢野優佳、矢野優佳、本当に誰なんですかね?知らないんだが)


 隣の貴方は本当に誰なんですか?と何度も眠たくなりながら思考するが、眠気に邪魔されて思考という思考ができないので諦めた。


「う〜ん!美味しい、やっぱり気持ちのいい場所でご飯っていいわ〜、ね!気持ちいいでしょ?ってええええええええ」


 矢野優佳やのゆうかしゅうの方へと話しながら振り返ると、話していた就が肉団子を箸で掴んだまま寝ているのを目撃し、棒読みで驚いていた。


「すごい器用に寝てるな〜、そういえばずっと眠そうなのを我慢してたような。気のせいじゃ無かったんだ。悪いことしたかな〜、教室行った時も寝ようとしてたところを引き止めちゃったし」


(でも、寝顔なんか可愛い)


 矢野優佳はそんなふうに思っていると、就の頭が下がりそうになるのを見て、このままでは肉団子が落ちてしまうのではと思い、自分の食べかけの弁当箱をその肉団子の下に添えて落下を阻止しようとする。


 すると、肉団子は箸から落ちると思っていたのに箸が上へと急に上がり、口の中へと運ばれる。


「あ、あれ?」


「う〜ん!よく寝た」


「どういうこと?」


「ごめんごめん、途中寝てたかもあはは」


「いやそうじゃなくて、肉団子は?え?」


「肉団子?あ〜さっき起きてとっさに箸で上に上げて食べた」


 矢野優佳やのゆうかはとっさにあっさりとやってのけたその行動に思わず噴き出し、笑っていた。


 一方就しゅうはなんで笑っているのか分からず、頭の中は?マークでいっぱいだったという。



















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