スコール

夕立の 降った時間は 短くて 次の授業は 体育館で



風邪の日の 寝室のドアに 黒後家蜘蛛



鼻よりも 口がいいのだ ただひとつ 喉の奥では 網をひきずる



4年生 今日と同じく 休む日の インターホンを 鳴らした友達



都会には 星も涙も ないけれど ここだけの夜 ジオラマのビル



薄墨の 空一面が 喪に服す



マスク裏 吐き出すように 咳をして 歌う彼女の 喉を傷つけ



たとえ今 君がこの目に 見えずとも この胸にある 素敵な思い出



歌ってよ せがんだのは いったいだあれ 忘れな草を ぎゅっといだいて



逆光に 二人の影 いままでの青



君のを 今はまからむ 笑顔見て 寝台の上 目を刺す光



風は凪ぐ 東の空を 差し置いて 夕焼け小焼け 君は飲まれる



つばくらめ しあわせ屋根の 子供らに うつさぬように 離れた背中



余るゆえ つい滑らせた 中庭で 駄弁る声聞く いた教室



高窓たかまどの 破れた網戸の つくる影



藤の君 連れないでくれ ほんとうは 季節外れの 春を知ったんだ



開きかけの 口にほこりが 溜まってく 砂とかげりと 空は快晴



雑踏に 人も時間も 過ぎていく ただめぐり逢う 川路の如く



ごみの山 オブジェになった 君の顔 ああどうしても その目に涙



ながらく 閉じていた窓を開けて あたらしい日を ここに始める



線香の 炎かき消す 夕立を 見つめて思う 新盆の夜

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歌集 白詰草 月雨新 @nomoon_Arata

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