一番人気よりも一着を。底辺騎手と弱小サラブレッドの成り上がり

 鳴かず飛ばずの底辺ジョッキー町村優駿は、落馬による意識混濁の中で競走馬の王様キングオベイロンから弱馬救済の命令を受ける。三流騎手と落ちこぼれサラブレッドが奇跡の復活を遂げ、大穴の万馬券を量産する大勝利を重ねる快進撃が痛快です。

 競馬は血統の優劣がすべてを決めるブラッドスポーツ。しかし勝負はゴールするまでわからないのが競馬の面白さだ。

 キングオベイロンの助力で町村が得たのは競走馬と対話する力。レースの意義、集団の位置取り、仕掛けるタイミング、それまでの騎手生活で培ったノウハウを競争馬に直接教え込み、人馬一体となってレースに挑む。
 誰も予想だにしないレース展開で、ゴール直前に馬群の後方から一気に追い抜いて一着をもぎとる逆転劇が興奮する。

 血統の劣る競走馬で連勝し注目を浴びる町村だが、キングオベイロンとの契約で馬が強くなれば鞍を降りなければならない。騎手としての町村は決して大舞台のレースでは走れない。
 そんなジレンマを背負いながらも、経営難に陥った幼なじみの厩舎を救うために立ち上がる勇姿にシビレます。

 最後に勝つのは馬の血統か、それとも騎手の腕か。その答えは物語の最後まで読まなければわからない。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)