あとがき

 『日曜日なんにもしない同盟』をお読みいただき、ありがとうございます。ますりうむです。

 このあとがきには本編のネタバレを多分に含みます。未読の方は是非一話からお楽しみください。



※※※ネタバレ注意※※※



 日曜日を部屋で怠惰に過ごすだけなお話、いかがだったでしょうか? 後半は部屋でもないし、怠惰でもないお話になってしまいましたが、無事完結を迎えることができました。

 ここでは、『日曜日なんにもしない同盟』の執筆秘話などを、少しだけ公開したいと思います。質問がありましたら、なんなりと応援コメントや近況ノートのコメントをお使いください。


 このお話を思いついたのは、カクヨムに投稿を始めて数日経った頃のことです。現在も連載中の『童話の国のリリィ』が思うようにPVが伸びず、別の方面から読者を引き込めないかと考えて、違うジャンルで新作を書こうとしたのがきっかけです。じゃあ、なにを書くかと思ったとき、毎週決まったルールで同じ時間に更新される読み切りだったら、特徴があって、ますりうむの名前を憶えてくれるのではないか、と浅知恵が働きました。読者の負担にならないように日常物で、分量は読みごたえがある五千文字程度、そして、自由に使える時間が多い日曜日を選びました。

 仕事や学校に追われず、二度寝を貪り、目が覚めてからも布団から出ずにスマホを弄る。そんな時間に読むものがあったら、心地よい日曜日がスタートできるだろう。

 そんな単純な思考のもと、この毎週日曜日朝九時更新というルールが生まれました。

 日曜日のまどろみのお供になる小説と銘打ったところで、じゃあ何を書こうかという疑問にぶち当たります。いろいろと考えた結果、なんにもしないというシンプルな答えにたどり着きました。毎週更新だから取材に行っている暇もありませんし、私の負担を考えたら舞台は部屋の中だけの方がいい。キャラクターも一番書きやすいタイプの主人公とヒロインを選び、部屋の中で遊べるネタをノートに書きだしました。

 書きたいシーンやキャラクター、凝った設定を思いついてから書き始めることが多いですが、このお話は実はそういう打算から始まっています。


 週一連載はそこまで負担ではありませんでした。月曜から金曜日までに日常ネタを収集して、土曜日に書き上げて日曜日に更新する。結末なんて思い描いてもいなくて、現実と同じ時間を二人が歩んでいるように見せることに、尽力していました。台風の話なんて、執筆済みだったモンブランの話を急遽繰り下げてまで、ねじ込んだりしました。


 そんな平和な日曜日だったわけですが、唐突に魔が差してしまいました。

 それが第10話『■■■■■をしよう」です。もうぶっ壊しに来ているとしか思えないタイトルですよね。でも、延々と続くと思えた日常だからこそ、このエピソードは書きたかったんです。いつも悩みなんて感じさせずに過ごしていたつむぎが、突然部屋に来なくなる。絶望に突き落とされた玲くんが、悩み葛藤し、それでもつむぎに会いたいと奮起するストーリー。現実だってドタキャンされることはありますが、きっとドタキャンする側だって、何かしら事情があるはずです。すれ違った思いを元に戻す玲くんの姿に、諦めない力強さを感じていただけたらという思いを込めています。

 毎週更新から毎日更新にしたもの演出でしたが、これもいい効果を生んでくれました。おかげで執筆は火の車でしたが……。


 そして、最終エピソードです。

 正直なところ、第18話『アパートを飛び出そう』で完結にすることも考えていました。なんにもしないというタイトルを回収し、二人の距離が縮まってハッピーエンド。そういう綺麗な世界も、ありだったのかと思います。

 ですが、やはり、続きを書きました。書かなければ終われないと思ってしまいました。

 ラブコメを盛り上げるのは、二人の間にどれだけ大きな障害があるかにかかっていると思います。ラブコメを謳っているのにラブ要素は薄く、時たま二人の会話に違和感があったことに感付いている方もいたことでしょう。裸で風呂から出てくる玲につむぎが動揺していなかったり、二人の間に赤ちゃんはできないと言ったり……。この物語の最大の障害は、性別、だったんです。

 是非とも皆さんに聞いてみたいです。いったいどこで、玲くんが女性だと気付かれましたでしょうか?

 絵がある漫画やアニメにはできない小説だからできるトリック。いかがだったでしょうか?

 ラブコメの主人公が実は女性だった、しかもクライマックスの土壇場でそれが明かされるどんでん返し。自分で言うのもなんですが前代未聞です。少なくとも私は読んだことがありません。そもそもラブコメと呼べるのかすら怪しくなってしまいます。

 でも、書きました。ふわふわした世界のまま、二人が一度もぶつかることがないまま終わるなんてできませんでした。私の中にも、二人にくっついてほしいという願望があったのでしょう。つむぎが強くて本当に良かった。

 二人の幸福な未来を、心から願っています。


 さて、長々と書いてきましたが、あとがきもこれで終わりです。

 打算から始めたお話ではありましたが、書ききってみればとても思い入れのあるお話になっていました。それもこれも、毎回お読みいただいた読者のおかげです。毎週更新から毎日更新に変わったとき、二十人近い方が最新話を追いかけてくれるのが分かって、とてもうれしかったです。応援本当にありがとうございました。

 一週目をラブコメとして堪能した方は、是非二週目を百合小説としてお楽しみください。新たな世界が開けるかもしれません。


 また新しい物語で巡り合えることを願って。




2019年12月22日 ますりうむ

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