『かめさんの登山』
やましん(テンパー)
『かめさんの登山』
【このお話は、妄想によるおとぎ話です。なので、すべてフィクションですが、一部、うつぎみな作者の、つたない意見陳述が含まれております。】
🐰 🐢
さて、なかよしのうさぎさんがいなくなって以来、荒れ地でさみしく過ごしていた
かめさんですが(『うさぎさんとかめさん』参照・・・🐢)、あるひ、ついに裏の
お山に登ってみる決心をしました。
そこで、あのなつかしい水筒にお水をつめ、えっちらおっちら、昇り始めたのです。
うさぎさんは、しょっちゅう昇っていたらしく、頂上には人間さんが作った売店が
あり、お水も飲みほうだいなんだとか。
賑やかな音楽がいつも流れていて、まるでお祭りみたい。
そりゃあもう、あの竜宮城みたいな、賑やかな場所だというのです。
かめさんは、最近、人間さんたちが、このあたりには、さっぱり来なくなったの
は、まあ、少し気にはなっていましたが、例のス―パーまでは、かめさん一人では
行けそうになく、それも、もし閉店していたら、せっかく出かけても意味が無く、
近くの沼で、なんとか細々としのいでおりました。
その向こうは、実は行ったことがありません。
うさぎさんによれば、森を抜けると、人間さんの街があり、その向こうには、も
う、知らない世界が広がっているのだそうです。
お山に登れば、世の中の様子も分かるでしょう。
そうして、ある朝、ついに、裏のお山に登頂を始めたのです。
カメさんの登山は大変時間がかかります。
そこで、最近、北欧の勇気ある若者が地球環境の保護について、たまりかねて、
声を上げています。
若い方々が、自分たちの未来について、強く心配するのは当然です。
情報を知らされていない国の若者は、声を上げる事さえできません。
それについて、現代世界最高の偉い方おふたりが、ツイッターといかいうもの
で、皮肉交じりの、お説教をしたらしいです。
もし、事実なのだったらば、ちょっと、残念です。
そんなに、賛同の輪が広がるのが怖いのならば、まずは、堂々と若者たちと話し
合うべきなのです。
話し合うだけでなく、具体的な行動も必要ですけれど。
それは、賛成派の人にも、反対派の人にも、どちらにも重要な事です。
それでこそ、広く人々の信頼を得られるのです。
ツイッターなんかで、こそこそ批判していい気になってるなんて、地球最高の大物
様には、ふさわしくない態度です。
どんな主張の持ち主でも、『大物』と言われる方は、そのような、勇気ある若者
の足元を、まるで棒でつつくようにして、偉そうになさるべきではありませんし、
おそらくは、やらないでしょう。
それでは、偉大な大物様という看板が泣きます。
ぜひ、大物らしい、太っ腹な応対をしてください。
引退した、役立たずおじいさんの、ほんのちょっとの応援なのです。
と、言っているうちに、かめさんは、1っか月以上かけて、やっと頂上につきました。
「あら~~~~~~~、なんと!」
かめさんはびっくりしました。
頂上には、人間さんは誰もおらず、お店などは、荒れ果てていました。
建物の窓は、あちこち粉砕状態。
椅子は、泥だらけで、散乱しています。
飲み物のボトルや、食べ物のくずが風に舞い、万国旗の一部が、ちぎれてはためい
ています。
ちょっとした、遊園地もありますが、回転飛行機が、墜落しています。
そうして、かめさんは知りました。
お山の周囲を見れば、森の向こう側は、一面が、すっかりと、どろどろの沼になっ
ていたのです。
「あらあ~~~~~~。これじゃあ、だれもこないなあ。なんとまあ、うさぎさ
んにも、見せたかったなあ。やっこらせ。」
大きな人工の、お池がありました。
あまり、きれいなお水ではなさそうでしたが、かめさんはひと泳ぎしました。
「まあ、すこし、宿泊してから、降りよう。ぼくには、あまり関係ないからな。」
1週間くらい滞在し、小さな博物館や、写真展を観覧しました。
楽しそうな、人間さんの子供たちの笑顔や、親たちのうれしそうなすがたが、少し
色あせた写真の中から浮かび上がります。
うさぎさんが、かつて見たのは、こういう風景だったに違いありません。
それから、かめさんは、ゆっくりと、お山を下りました。
その後、生きているうちに、あと、二~三回、観光に訪れました。
かめさんは、長生きなのです。
でも、人間さんには、ついに、一回も、出会いませんでした。
🐢 🐢 🐢・・・おしまい
『かめさんの登山』 やましん(テンパー) @yamashin-2
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