4つ目

(ネガティブな芦角高校一年生のソウマは、友達のヒビトにむりやり強豪の吹奏楽部に入部させられる。次第にトランペットの才能を開花させ、ついにコンクールでソロパートを任せられた。)



物心着いた時から、お前は自分に自信が持ててなかった。


自分は雑多の中の塵でしかない。自分に出来ることは誰でも出来る。そう思って生きてきた。思い込んで生きてきた。


自信が持てなかったから、興味も持てなかった。自分がこれを極めたところで何になるだろうか?何にもならないだろう。そう思って生きてきた。思い込んで生きてきた。


しかし今、この状況に置かれているお前はそう思うことが出来ないようだな。なぜって?解ってんだろ。


カナジーにソロを任された。


これが何を意味するか?


アシ高吹奏楽部の華を任されたということ。


つまりお前は雑多の中の光だ。今この場で、お前にできることがみんな出来ないということ。


下手に俺のことを、意気地無しだとか何とかネガティブ思考してみろ。この俺が全てぶっ壊してやる。お前ならやれる。派手にぶち込んでやれ!


俺の中の俺の叱咤激励を受け、ついに俺は前を向いた。網膜に映るは、父さん、母さん、そして、ソノミ。それ以外は、全てかぼちゃ。


カナジーがチラと俺を見て、そっと笑った。


タクトが振り下ろされる。


始まりだ。


俺のトランペットが火を吹いた。



・カナジー 顧問の金橋先生。今年で定年の優しいおじいちゃん先生。

・ソノミ 向かいに住む幼なじみ。ヒビトをよく泣かせていた。

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国語のテストに載ってそうな話 田中あやと @scarecrow8

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