6-2

 お騒がせしました。ママ。


 返事はない。わたしは振り返った。ベッドの傍らにソフィーが立っていた。ママの手首をつかみ、神妙な顔をしている。わたしは銃を投げ捨て、ベッドに駆け寄った。


 ママは?


 ダメだね。死んでるよ。


 ソフィーは首を振った。


 こんな老人の前でドンパチするんだもの。


 わたしはママの手を取った。すでに冷たくなっている。まるで魂がそこから抜け出たように口が半開きになっていた。安らかな死に顔だった。揺り籠で眠る赤子。あるいはそれを見守る母親。楽園でも夢見るようにして微笑んでいる。


 もう終わりだな。わたしも、この島も。


 なぜそんなことを思うんだい?


 ママのいない島なんて考えられない。


 なら、君が代わりになればいい。


 わたしが? よせよ、ママなんてがらじゃないことは知ってるだろ。


 何も無理にママになる必要なんてないさ。


 ソフィーはウィンクしながら言った。

 

 そうだろ、パパ。

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Agnus Dei 戸松秋茄子 @Tomatsu_A_Tick

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