第4話 コネクターの歴史

僕はエクトルと一緒に自室へと戻ってきた。

少し小さめのへやにたくさんのコネクターや点検に使う道具が所狭しと置かれている。

「いやぁ、この部屋はいつ来ても慣れねえな」

「ふふ、凄いでしょ。といっても僕のコネクターはここには一つもないんだけどね。レイのだったり他の同世代の子達のばっかりだよ」

「そう、それ!俺気になってたんだけどなんでラノはコネクターをいっぱい持たないんだ?好きなんだろ?」

エクの言うとおり僕はコネクターを一つしか持っていない。そのせいで僕はギルド最弱なんて呼ばれたりしてるんだけど。

「うーん、エクはコネクターについてどれくらい知ってる?」

「えっと、人と繋がって力をくれる道具じゃないのか?それくらいしか知らないけど」

「うん、基本はそういうことでいいよ。あ、そうだついでだし今日はコネクターのお勉強にしようか」

「えー、それラノが話したいだけだろ」

「まあまあ、そうなんだけどでもコネクターについて知っておけばいざ使う時に役立つでしょう?」

「まあ、確かに。じゃあお願いしますラノ先生!」

「うむ、よろしい。では授業を始めます。ふふふ」

「へへへ」

よく分からないノリに二人して笑いながらコネクターの授業が始まった。





コネクターは人間の生活に切っても切れないほど密接な関係にある。生まれた時から身体にコネクトするためのポートがあるのだ。使わない手はない。人の歴史とはコネクターの歴史でもあるのだ。

昔の学者であるファスキナ・メルカナルはコネクター研究の第一人者だった。彼はコネクターの可能性を常に模索していた。人と繋がり超常の力をもたらすそれがそれだけで終わるはずがないと考えのだ。彼の実験は常軌を逸していた。コネクターを調べるに当たってまず初めに行ったのはポートについてだった。

そう、人間に生まれついた時から備わっている穴だ。彼は手始めに人間の死体を解剖した。調べ物は結局のところ実物を見るのが一番効率がいいのだ。ポートがある部位を切り取りそこからどう繋がっていくのかを調べあげた。何体もの死体を使って。

結論を言うと繋がりは分からなかった。ポートはただ穴があるだけそこから目に見えない力が伝わっていくそんなことが実験を通じて分かっていった。いや、そうであると仮定したものを強引に確定したことにした。

ポートとはただ穴があるだけのものと確定した所で一つの疑問が彼の頭に浮かび上がった。穴があるだけなら、別に作ってしまっても問題ないよね、と。


彼の中での結論はこうだ。

ポートとはコネクターを円滑に接続するためだけの部位でしかなくそうする為に人間がしてきた進化なのだと。つまり、大昔の人間は何も無いただの身体にコネクターを突き刺していたのではないかと。


だが結局それは周りからしてみればもしかしたらの話だ。だが彼は研究者とは理論に基づき仮定を少しずつ確定させていくものだという固定観念に周りが捕らわれている時、過程を飛ばし仮定を確定させていた。詰まるところやってみればいいのだ。

間違っていたら身体に穴が空くただそれだけの事だと断じて机上の空論を現実にしていった。


実験は成功。彼の元々のポートの位置は右肩。だが今は血を流しながらも左腕にコネクターが刺さり彼のまわりにコネクトを確証させる力の奔流が確かにあった。

実験に実験を重ね分かったことが幾つかあった。


一つは新たに刺したコネクター(そしてポートはこれからはサブコネクター及びサブポートと呼びサブにコネクトする場合をサブコネクトとする。それに伴い従来のコネクター、ポートをメインコネクター、メインポートと呼びメインにコネクトすることをコネクト、またはメインコネクトとする。)

では確かにコネクターを扱うことはできた。だが一つ問題があった。出力が明らかに低いのだ。実験に用いたのは電気系統のコネクター。メインで使えば電球を光らすことなど造作もないがサブの場合同じだけ力を流しても光量は微々たるものだった。

これは別系統のものでも同じで炎なら火力が風なら風圧が水なら水量がどれもメインに比べ抑え気味になってしまった。

二つめの成果だがメインとサブは同時に使用することも可能ということだ。

戦闘においては牽制目的でサブを使うのもいいだろうし日常的にはサブで明かりを賄ったりなども出来るようになる。

三つめ、サブポートは一つだけではないということ。ふとメルカナルは思った。サブが一つだけじゃなければいけない道理はないと。思ってしまったのだからやってみるしかない。それが研究者というものだ。二つ目となるサブコネクターも問題なく作動した。だが一つ目のサブコネクターよりも出力が落ちている。ここでひとつの仮定が彼の頭に浮かび上がった。一人の人間がコネクターの力を引き出すには限界があるのではないかと。


彼は続けざまにコネクターを刺した。三、四と刺したところでサブコネクターは遂に起動することはなかった。メルカナルという人間がコネクターを動かせる限界はメインとサブ合わせて四つまで、個人差を調べる為に彼の助手にもコネクターを刺した。助手はメインとサブが二つの合計三つまで起動させることができた。個人差は存在することが分かった。

サブの実験を始めてから数日たった頃彼に変化が訪れたのだ。

一つ目のサブコネクターである電気系統のコネクターはあれから一度も抜くことなく実験を繰り返していたところ確実に前よりも出力が上がっていることが分かった。

一度抜いてみて別のコネクターを挿してみるとそのコネクターの出力も微量ながら上がっている。

まとめるとこうだ。


ずっと挿していた電気系統のコネクターは目に見えるレベルで出力が上がっている。

別の箇所に挿していたコネクターを一つ目のサブポートに挿すと微量の出力上昇が見えた。

電気系統のコネクターを別のサブポートに挿してみたところ、これも微量の出力上昇があった。

電気系統以外を一つ目のサブポート以外に挿すと出力の向上が見られなかった。


以上の結果からコネクターとポートは成長していくことが分かった。人間の限界点の向上というよりはコネクター、ポートそれぞれだけの成長ということだった。これを結論づけるためにもう一度コネクターを刺してみたのだがコネクターが起動することはなかった。

もしかすると実際は限界点が上がっていてまだ次のポートを起動させるに至っていないという可能性も考えたが一つ目のポートしか出力向上が見られないためそれはないものと考える。

どうして今までこの現象が起きなかったのかと彼は推測する。

単純なことでメインでは上がり幅が分かりづらいのだろう。目に見えて分かる頃には使っていたコネクターよりも強力な物を手にしていてポートの上がり幅とコネクターの初期値を合算してたものをそのコネクターの力と思っていたのだろう。


簡単に彼の実験結果を纏めると


一つ目、サブコネクトでは出力の低下が見られる。


二つ目、メインとサブの同時使用の可能。


三つ目、サブポートは複数作ることが可能。

だが人によっての限界点がありそれを上回るとコネクターの起動は出来なくなる。言い忘れていたが起動することが出来なかったポートもどきは普通の怪我同様に徐々に治っていくが起動できたポートは形状が固定され新たなポートなることが出来る。


四つ目、コネクターとポートは成長する。それにおいて人間の限界点が上がることは無い。メインでは上がり幅が分かりづらいが成長は確認されている。



ファスキナ・メルカナルはこの四つの成果を人類に示し、コネクター研究者としての地位を得たのだ。彼が後世に名を残すほどに。






「ふーん、じゃあラノはそのコネクターの成長っていうのを企んでるわけか」

「まあ、そんなところかなっていうのは建前でこのコネクターに愛着が湧いてるんだよね。初めての僕のコネクターだから手放すことが出来なくてね」

「じゃあ、そのサブコネクターってやつにすればいいんじゃないの?あ、でも身体に穴開けるんだっけ、痛そうだな」

苦い顔をしながらエクは言う。

「それに関しては問題ないよ。最近は技術の向上もあって痛みを感じないままにサブポートを作ってくれるからね」

「そっか、じゃあサブにすればいいじゃん!」

「うーん、まあ、そうなのかもしれないね」

「なんか嫌なことでもあるの?」

「いや、最初に言ったとおりただ愛着が湧きすぎてるだけだよ。うん、サブも視野に入れていこうかな」

「お、ギルド最弱も卒業かもね」

エクは少し嬉しそうに言った。僕に懐いてくれているから少し気にしていたのかもしれない。

「ふふ、そうだね」

僕もそれがうれしくてついつい頭を撫でてしまう。

「だーかーらー」

「はいはい兄貴ヅラすんなでしょ」

「ちぇっ」

そう言いながらも僕は撫でるのをやめることはなくエクもまた受け入れるようにただ撫でられるままになっていた。

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コネクター・コレクト 三田 京 @wakuwaku0327

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