超能力が使えるようになった人の末路

半澤 溜吾郎

第1話 薔薇色の人生

 「義人~夜食できたわよ」

 (今日のチャーハン失敗しちゃった)

 (べちゃべちゃになっちゃった)

 義人は今日のチャーハンも失敗したのかと、自分の部屋でうなだれていた。

 「わかった。すぐに行く」

 彼は勉強道具を片付け、机の椅子に座わったまま目をつぶり、ダイニングのドアを想像した。次の瞬間、彼はダイニングのドアの前に立っていた。そして、ドアノブに触れることなくドアを開閉し、中へと入っていった。

 義人がテレパス【相手が心で思っていることを読む能力】、テレポテーション【自らを別の場所へ移動させる能力】、テレキネシス【意志の力だけで物体を動かす能力】を身に付けたのは、3年前からだ。3年前の7月13日にテレパス、2年前の7月13日にテレキネシス、1年前の7月13日にテレポーテーションをそれぞれ身に付けた。超能力が使えるようになる時は、虹色の光に自らが包まれ、目をつぶると能力が使えていた。そして、いきなり能力が発動し、最初自分では全く制御できなかった。

 義人は美味しくなかった食事を終えダイニングを出ると、自分の部屋へとテレポーテーションした。

 (今日のチャーハンおいしくなかった)

 (けどいいや、あと30分で7月13日。新しい能力を授かれる日だ)

 彼は、最初こそ自分の能力に対してマイナスな感情を抱いていたが、今では、自分の能力を誇りに思い、超能力を授かれる日を楽しみにしていた。

 (早く虹色の光こないかな)

 (とりあえず外に散歩でもしよう)

 義人の能力は家族には秘密なので、家の中より外の方が安全なのだ。

 (次の能力はなんだろうな。パイロキネシスか何かかな)

 (ああ、僕の生活がもっと豊かになる。薔薇色の人生だ!)

 そんなことを思い浮かべ、にやにやしながら歩き続けていると、踏切にさしかかった。そして彼は、終電がないのをいいことに、線路へ向かって歩き始めた。

 (あと少しで能力が手に入る! そして夜中の線路ならどんな能力が発動しても誰にも見られず安心だ)

 そしてついに彼は、虹色の光に包まれた。

 (きたぁ~ 次の能力はなんだ!)

 彼はとっさに目をつぶり、期待に胸を膨らませて、来たるべき瞬間を待っていた。しばらく目をつぶっていると辺りが騒がしくなり、ゆっくりと閉じていた目を開くと、昼間のように明るくなっていた。そしてふと彼が目線を上げると・・・



 電車がすぐそこまで迫っていた。

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