第66話 閉会


朝9時から行なわれた髑髏との会話解明検証も午後5時閉会となり、閉会の挨拶は姫路警察署長・奥田義孝氏がなされた。


「姫路警察署長の奥田義孝でご座います。本日はお忙しい処、当姫路署に多数の方々がご参集下さり誠に有難う御座いました。

本日行なわれた髑髏との会話検証に付きましては、先刻兵庫県医師会長のお言葉どおり、現段階では医科学両面からの検証は納得の域に程遠く、今後の宿題として大きく残りましたが、近代日本における医科学発展の進歩を考えればこの疑問点も近々解明されるものと確信致し期待しております。次に、この事件に今迄関わった関係署員一同、今、ホッとしている事でしょう。


『野井戸殺人事件』本部を当署に置き、関係署員方々の努力の積み重ねで事件の解決を見ましたがこの捜査に当たり、殆んど『鬼頭氏』の聞き取り情報を基に捜査を進め、犯人に結びついた事は申す迄も有りません。この事件に関与した関係署員の代表としまして、この非科学的言葉を信じ犯罪捜査活動を実施した事に付き、後日、関係機関及び報道機関等から厳しい批判がなされるものと思い覚悟をしていたので、本日の解明検証に絶大な期待を寄せていたのです。


本日鬼頭氏の会話解明検証が、各関係機関方々の協議委員会において『鬼頭氏は髑髏と会話可能な人物』と認定された事で、何より安堵致しているところで御座います。この事件解決の過程で信じられない非科学的捜査活動を行なって来た、諸々の批判が取り除かれる事を願い期待を寄せていました。


これで署員一同、以前どおり日々の勤務に専念出来る事を確信致す処で御座います。

本日は、人類史上始めて、この重大な髑髏との会話解明検証に場所の提供並びに参加させて頂た事は、私し個人と致しましても生涯を通じ貴重な財産になるものと思っております。

最後になりましたが、ご来賓方々を始め、解明検証に参加れた各関係機関の方々のご健康と、今後益々のご活躍をお祈り申し上げ…簡単では御座いますが、閉会の挨拶に代えさせて頂きます」


閉会の挨拶後、府県警の方々が慌しく、私の処に来て名刺を渡され、身元不明遺体の解明、事件の真相、犯人の氏名等多くの難問解明に協力要請を頼まれると共に今後の活躍と激励の言葉を頂いた。


昭和31年7月26日

私は、姫路部隊連隊本部に出頭するよう、教育隊長より伝達され、連隊本部に赴くと、第一係主任から、岐阜県警本部長よりの紹請依頼の書管を読み聞かされた後、意見を求められたので、私は現在「陸曹教育隊」の教育中、然るに教育隊長の指示に従う旨述べました。


後刻、岐阜県警本部の要請どおり、三泊四日の日程で特別派遣を命ぜられ、二人の広報担当官と共に出張したのです。


今から出遭う「数奇の事件」の解明を想像しながら姫路駅、午前9時35分発「特急列車つばめ」に乗り一路岐阜市に向かう事となった。


時に昭和31年7月28日だった。     

          


~第一部 終わり~  

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私の特殊能力、それは「骸骨と会話ができること」 胡志明(ホーチミン) @misumaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ