第3話

茉莎子はしぶしぶ日舞の稽古に通いだした。

幼少期には自宅にお師匠が通って教えてくれていたが、今回は浅草のお師匠の稽古場に通うこととなっり、山の手育ちの茉莎子には、浅草の街が新鮮に映ったのである。


当初こそ渋ったものの、稽古場で見かける芸妓さんたちや浅草に惹かれていくのに、そう時間はかからなかった。


茉莎子は容姿は決して悪い方ではなかったが、

色黒で背が高かったため、日舞の見栄えは良いとは言えず、芸妓さんたちを眺める方が楽しかった。


中には声を掛けて他愛ないお喋りをしてくれる芸妓さんもいた。


そんな訳でお稽古通いはつづいたが、そろそろ高校も卒業だというのに、本人には卒業後のプランというものは一切なく、近所のドレスメーカーか和裁の学校にでも行かせるか、と家族は考えていた。

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茉莎子という女 茉莉花 @jasmeen

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