席替え
2学期半ばのこと。
「席替えすっから、くじ回すぞーー」
HRの終わりに先生がそう告げると、
「よっしゃぁあー!」
クラス中にざわめきが起こった。
席替えはささやかながら、重要なイベントの1つ。
「うわぁ~、何か緊張して来た」
くじが入ったカゴが回されて、教室のあちこちから期待と不安の入り混じった色んな声がちらほらと聞こえて来る。近くまで回って来たくじを、ドキドキしながら見つめる。
緊張の一瞬。
窓側になりますように!!!
くじを引いて、おそるおそる開くとー
[23]
黒板に書かれた座席表を確認。
えーと、23、23、と。
窓際の1番前か。
まあまあだな。
問題は周りの席に誰が来るか。
「紗世、何番だった?」
美優が後ろの席から声をかけて来た。
また近くの席だといいけど。
『うちは23。美優はどこ?』
「わたし、16。離れちゃうね…」
となりの席、誰だろう?
不安になって来た。
「オレ、19~」
佐伯が大声で叫んでるのが聞こえた。
誰も聞いてないのに。
何となく、「何か言ってるなー」程度に聞き流した。シカトされてもめげずに続ける佐伯。
「23、だれ~?」
19...23
ん?23?
23て私じゃん。
となりは佐伯。
イヤな奴がとなりじゃなくて良かった!
「じゃぁ、移動はHR終わった後で
自分たちでやっとけ。じゃあ、終わるぞー」
放課後、みんなが一斉に移動を始めた。
「紗世、佐伯のとなり?
きっとうるさいよ、アイツ。
ドンマイ…」
新しい席に移動していると、茜に憐れむようにそう言われた。そんな言うほどじゃないと思うけど...私は彼のこと嫌いではないから、何とも思わなかった。
「おっす、23番て皆川?」
『うん、そうだけど』
「よろしく~」
こうして、佐伯のとなりの席での学校生活が始まった。
席替えをこれほどありがたく思ったことはなかった。
席替えのくじにアタリ、ハズレがあったとしたら、今まで佐伯のとなりになった人はみんな「ハズレ」だと言った。だけど、私にとってそれは「アタリ」だった。
もう席替えなんかしなくていい、
ずっとこのままでいいとさえ思った。
君は退屈な毎日に笑いを与えてくれた。私の心に入って来たんだ。
君のいた席 天音 紗世 @maktube
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