七味

 「助けてくれて…有り難う御座います。」

 涙目の少年はお礼を言った。

 「いーよいーよ。君、名前は?因みに僕はシモン。

 こんな所に何しに来たの?因みに僕は絶賛迷子中。人里はどっち?」

 「僕はタツミン。この薬草を母の為に……街なら案内します。」




 「おぉ、タツミンよ。見つけたのか。これでお前の母は治せる。」

 「薬の賢者様!有り難う御座います!」

 タツミンが薬の賢者と呼ばれた老人に花を渡そうとする。

 「ちょっと待って。」

 それを僕は止めた。

 「シモンさん?」

 「何じゃ小僧?」

 「これ、薬じゃないよね?富豪の花。高値で売れる花だ。

 &彼方、薬の賢者じゃないでしょ?」

 偽者だ。彼は。

 「正体を見せろ!」

 手に持った瓢箪を投げつけた。

 老人が飛び上がってそれを躱した。

 「薬様?」

 タツミンが茫然とする。

 「タツミン君、これを。これを君の母親に飲ませて。」

 そう言って瓢箪を一個渡す。

 あれなら大概の病は治る。

 それが毒に依るものであっても。

 「何モンじゃ主。儂の邪魔をしおって。」

 「楽の愚者が薬の賢者の真似をしないでくれるかい?

  彼は友達なんだ。」


 上空に飛び上がった老人に瓢箪を構える。

 「五月蝿い!儂の一攫千金を邪魔して……死ね!」

 上空から紫の液体を投げる。

 「骨までドロドロじゃぁ!」

 瓢箪を投げる。

 瓢箪が溶けて中から赤い粉末が飛び出す。

 毒が赤く染まり、逆流して楽の愚者を襲った。

 「な!ギャァ!」

 落ちた愚者。

 体が辛いだろうね。

 「貴様………何者だ。」

 「僕?僕は賢者。七味の賢者シモンだ。」








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七味の賢者の作る七味 黒銘菓短編集5弾 黒銘菓(クロメイカ/kuromeika) @kuromeika

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