第8話


「つまりは、気合ってことね!」



 復活した鳴子部長は、拳を握って半ば投げやりに宣言した。



「うわぁ、ざっくりまとめましたね」


「うっさい、陽。ノベルで書くか、マンガで書くか、どっちが効果的かなんてどうでもいいの。だって、そんなものは好きな方を書けばいいんだから!」



 なんとも考えなしな発想であるが、鳴子部長らしい快活なもの言いが、からっとした晴れ空のようでいいまとめになったのではないかと思う。


 静もそう思ったようで、かるく笑みを見せた。



「私もそれでいいと思います。いろいろ言いましたけど、私は鳴子部長の書くラブコメ好きですよ。なんていうか、どんな悩み事も基本的に投げっぱなしなところが」


「それって褒めてる? 褒めてるんだよね? ねぇ、静?」


「ものは考えようですよ、部長」


「そ、そっか」



 丸めこまれてますよ、鳴子部長。


 まぁ、鳴子部長は、そのくらいちょろい方が、らしい、ので放っておくとする。


 僕は、肩の力を抜いて、鳴子部長に問いかける。



「で、鳴子部長。けっこう議論しましたけれど、なんとなく書けそうですか?」


「そうだね。最初に思っていたのと、ちょっと違う話になってしまったけれど、よりおもしろそうなイメージが浮かんでいるわ」


「それはよかったですね。僕達もがんばって考えたかいがありますよ」


「うん、ありがとう」



 鳴子部長は、うれしそうに笑みを浮かべた。これにて、今日の文芸部の活動は終わりである。久々に充実した活動になったのではないだろうか。


 そのとき、静が思い出したように尋ねた。



「そういえば、部長。それって、どこのコンテストに応募するんですか?」


「え? ××コンテストだけど」


「「「え?」」」



 僕たちは、驚きのあまり言葉を失った。というか唖然とした。



「何かおかしい?」



 おかしいも何も××コンテストとは、ガールズ向けのレーベル主催のコンテストだ。間違っても、女子の全裸を楽しむレーベルではない。



「そうよ。きれっきれでしょ?」


 

 何がだよ。

  

 鳴子部長のコメントの意味はわかりかねるが、つまるところこういうことである。



「それは完全にカテゴリーエラーです」



 カテゴリーエラー。レーベルの雰囲気や求めているものに見合わない作品のこと。ノベルのコンテストではいかに上手に書けていようと、カテエラというだけで落とされることはままある。



「えー、なんでよ」



 駄々っ子のように膨れる鳴子部長を見て、僕たちは、打ち合わせしたかのように肩を落とした。


 文芸部一同は、今日も、また無駄な時間を過ごしたようだ。

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推して敲け! とある文芸部のわりとまじめな日常 最終章 @p_matsuge

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