第13話2人の旅人
空に光が差し、山が銀色に輝き始める頃。
2人の少女と一頭の虎は町の外れ、街道に続く道に居た。
少女は涙を浮かべながら言う。
「ねえ、メル、キャプテン。もう行っちゃうの?もう少しここに居ようよ。」
嗚咽交じりの声が、薄明かりの中で響く。酷く悲しそうな声だ。
「ごめんね。でも、これでさよならじゃ無いから大丈夫だよ。また会えるよ。」
なだめる様にメルが言う。
その言葉に少女は頷くと、泣きながら歩み寄る。
そして、メルを強く抱きしめ、涙を堪えながら、震える声で言う。
「メル、ありがとう。本当にありがとう。メルの事は忘れないよ。ずっと。」
「メルもだよ。」
メルは笑顔で返す。
そしてギュっと、少女を抱きしめ、いつもの明るい声で言う。
「だってメル達友達でしょ!メルもずっと忘れないよ!いつか必ずまた来るからね!」
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太陽が昇り、辺りが光に包まれ輝く中、少女は1人、町外れに佇んで居た。
魔女と虎の影が遠くに消えても、少女はその方向をずっと眺めていた。この奇妙な出会いに想いを馳せながら。
数日だったが、少女の胸には2人の事が強く刻まれている。
もしかしたら、この出来事が全て夢であった。そんな気さえする不思議な日々だった。
ふと、遠くから少女を呼ぶ声がした。
それは少女の父が、自分を探している声だった。その声を聞き、やはり夢では無かったのだと、改めて噛みしめる。
「またね、メル、キャプテン。待ってるよ。」
そう呟くと、少女は父の待つ家へと帰って行った。
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長く続く一本道の街道を、1人と一頭の影が歩いている。
辺りは青々とした草原が広がり、時折吹く風が涼しげに草を揺らす。
「今回の旅は収穫があったな。」
と、白い虎が少女に話し掛ける
「確かに!新しい友達も出来たし!楽しかった〜」
銀髪の少女が楽しげに返す。
「違う、メルの記憶についてだ。まだ聞いてない事もあるんだから、今度ちゃんと話してよ。」
「えぇー!?せっかくあの子との、思い出話しようと思ったのに。キャプテン、またそればっかり。」
白い虎は叱るように返す。
「旅の目的を忘れないように!」
はーい、と銀髪の少女は拗ねたように返事をする。
「でもまた、あの町には行きたいね!お友達もいるし、それに、山の石碑にも、また今度って言っちゃったしね。」
「ちょっと待て、石碑の話は知らないぞ!
ちゃんと話して貰うからな!」
問い詰める白い虎から逃げるように、銀髪の少女は走り出した。
「また今度ね〜!あっ!キャプテン!あそこまで競争しよ!」
「ちょっとメル、待ちなさい!」
街道には2人の声が響く、まだまだ先の見えない旅の途中で。
メルの旅 @taksh
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