第12話魔女の力
「それじゃあ、メル。お願い、お父さんを助けて!」
「メル。今回ばかりは失敗は許されない、それでもやるかい?」
少女とキャプテン、2人の声に頷きなから、メルはいつもの明るい声で応える。
「大丈夫!じゃあ始めるよ!」
メルは少女の父が眠るベッドの隣に立った。
表情は普段の笑顔とは違い、真剣そのものだ。そして手には、奇跡の花。
ゆっくり大きく息を吸い込むと、メルは静かに歌い始めた。
2人が見守る中、歌声は部屋中を包み込んで行く。その声は優しく、暖かな声だった。
「(この歌、私が遭難した時に聴いた歌と同じ。)」
少女は懐かしく感じる歌声に、耳を傾ける。
メルはゆっくりと、花を掲げる。その花に光が集まってくる。その光は、暖かな丸みを帯び、優しく光っている。
メルは優しく光る花をそっと、少女の父の胸に置く。そして、ゆっくりと歌を続ける。
歌に合わせる様に、淡い光が花から漏れ出し、彼を優しく包んでゆく。
「〜〜♪〜」
静かに歌は終わった。
淡い光は薄れて消え、花の姿も何処にも無い。
メルはゆっくりと、見守っている2人の方を向く。
その顔は、満面の笑みを浮かべていた。
「成功だよ!これでもう大丈夫!」
その一言で緊張の糸が切れたのか、2人が、はぁーっと大きな息を吐く。
少女は顔をあげ、メルに歩み寄る。
「メルには助けられてばかりだね。本当に
、ありがとう。」
安堵の表情を浮かべ、抱きしめて来た。
ちょっと恥ずかしいと言うメルに、いつかのお返しと微笑む少女。
少女はしばらく、抱きしめたまま離れなかった。
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少女が落ち着きを取り戻し、メルから離れると、今度はキャプテンが話しかけて来た。
「驚いたな。メル、いつの間にあんな魔法覚えたんだ。」
その問いに、メルは答えにくそうに言った。
「何というか、この魔法は使った事があるみたいなの、今まで思い出せなかっただけで。たぶん。」
「(メルは過去にも花を使ったのか。その記憶が戻って来たのか?)」
考え込み、何か言おうとしたキャプテンだが、飛びついて来たメルに遮られる。
「ちょっと、メル!何だよいきなり!」
「これでもう、プリン使いーなんて呼ばせないよ!ちゃんと今度から魔法使い、いや、魔女のメル様って言ってね!」
「分かったよ! 分かったから、離れなさい!重い!」
「重いだって!? キャプテン!女の子に失礼な事言わないの!!」
じゃれ合う2人を見て、少女も笑う。
「2人とも、本当に仲がいいね♪」
部屋に3人の明るい笑い声が響いた。
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