第11話花の記憶

メルは幸せそうな顔だった。

宿に着くと、旅の道中では食べれない暖かい料理を沢山食べ、デザートのプリンを沢山食べ、熱いシャワー浴びて柔らかいベッドへ倒れ込む。これ以上ない幸せだった。

その気の抜けた様子に、何か考えてたんじゃ無いのかと、呆れ顔でキャプテンが言ってきたが、それを無視して眠りにつく。


そしてメルは、不思議な夢を見た。

夢の中で、あの花を持った誰かが来た。

モヤがかかった様に姿がよく見えない。

その人物は花をメルに渡すと、何かを言って去って行く。そこで目が覚めた。


真夜中に目覚めたメルは、キャプテンを叩き起こす。

何事かと飛び起きたキャプテンに、メルは興奮気味に話す。


「あのね!思い出した!あの花の事!!」


「本当かい?メル。一体何を?」


寝ぼけた声のキャプテンを置いて、メルは部屋の外へ飛び出して行った。

慌ててキャプテンも追いかける。

何処へ行くのか聞くキャプテンに、メルは大声で返す。


「あの子の家!」



少女は悲しそうな顔をしていた。

少女の持ってきた奇跡の花を医者に見せた所、無理だと言われた。

今の医学では、この花は解明出来ないそうだ。なので、どうしようもないという。


「(もう、どうすればいいの?)」


そう思い、涙を浮かべていると、突然ドアを激しく叩く音が聞こえてきた。

少女はビックリしながらも入口へと近づく。

こんな夜更けに誰だろうと思いながらも、ドアを開ける。


「こんばんは!ごめんね!遅い時間に来て!君のお父さんを助けに来たよ!」


そう言って息を切らせるメルと、その姿を追いかけてくるキャプテンが居た。


-----


花を手に取って、メルは説明し始めた。


「これはね。ただの植物じゃ無いの。魔法で作られた花なの。」


ゆっくりとメルは言う。少女は固唾を飲んで見守り、キャプテンはメルを興味深そうに見ている。


「だから、お医者様でも分からないのは当然だね。だってこれは魔法使い、魔女の分野だもん。そして、魔女が使ってこそ、その力を発揮するの。」


「それじゃあ、どうすればいいの?その花を扱える魔女を探して、お願いするしか無いの?」


少女は不安そうに尋ねる。しかしメルは、待ってました、という顔をして言った。


「魔女はここにいるよ!君の目の前に! このメル・アイヴィーに任せて!」


そう言って胸を張る。


「ちょっと待って!メル、君は召喚魔法しか使えないプリン使いじゃないか。」


キャプテンの皮肉交じりの言葉に、またも自信ありげに応える。


「ちょっと思い出したんだよね!花の使い方!まあとりあえず、全部メルに任せなさい!」


そう言って、得意げな顔をするメル。もう譲る気は無い様だ。

思わず、少女と虎は顔を見合わせる。どうしたものかと。

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