第10話さあ帰ろう

「ここから外へ行けそうだな。」


そう言って、キャプテンが熊の開けた壁の穴から出て来た。

先を調べてくれたのだ。

穴を開けた熊は、まだプリンに埋もれている。

表面が揺れている所を見るに、中でプリンを食べている様だ。


「よかった。これで帰れる」


そう言って安堵の表情を浮かべる少女と、さあ行こう!と笑顔のメル。

熊がまた動くのも時間の問題なので、そそくさと2人はキャプテンの後へ続いた。

最後にメルが後ろを振り返り、どこか寂しそうな顔で呟く。


「バイバイ。またいつかね。」


早く来いと、キャプテンに急かされながら、2人は穴へと姿を消した。

静寂が戻ったドームには、巨大なプリンと氷に包まれた石碑だけが残った。


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穴を抜けると、辺り一面まぶしいばかりの銀世界が広がっていた。

いつのまにか、雲は消え、また青空が広がっている様だった。

3人は急いで山を下りる。その足取りは非常に軽やかで、飛ぶように駆け抜けていった。



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辺りが夕闇に染まり、山は茜色に染まる頃、町外れの家の前に、2人の少女と一頭の虎がいた。

少女は改めて、今回の冒険のお礼を言った。


「メル、キャプテン。本当にありがとう!2人が居ないと、この花は見つけられなかった。ううん、それだけじゃ無くて、私はあそこで命を落としていた。2人には感謝しきれないよ。」


そう言って頭を下げる少女。その様子に、笑いながら、そして照れ臭そうに


「いいよ。そんな大袈裟な。でも、どういたしまして。」


そうメルが返す。そしてしばらく、2人は笑い合った。


少し落ち着いてから、メルは花をどうするのか、少女に尋ねる。病を治す奇跡の花と言えど、そのままではただの花だ。知識なくして薬にはならない。


「お医者様の所へ持って行こうと思うの。私だけじゃどうしようもないから、、、

でもきっと、何とかなるはず。」


そう笑顔を浮かべる少女。


「そっか。お医者様なら安心だね!きっと大丈夫だよ!」


メルも笑顔で返す。ただ1人、キャプテンだけが、何かを感じたのか難しい顔をしている。


「2人はこれからどうするの?良かったら私の家に泊まって行っても、」


「ううん、大丈夫!私達はこの先の宿に泊まるよ。君のお父さんも心配しているだろうし、早く帰ってあげなよ。」


少女の申し出を断る様にメルは言う。その様子に少女は戸惑いながらも、


「また何かあったら連絡するね。じゃあね!」


と笑顔で別れる。メルもバイバイと笑顔で応える。

少女が家の中へと姿を消してから、2人は宿に向けて歩き始めた。

その道中、またメルは何か考え始めた。忘れている事があるが思い出せ無い、この感覚前にもあったな、と思い耽るメル。

その様子にキャプテンが尋ねる


「どうやら何か、引っかかる事があるんじゃ無い?」


「うーん、何か思い出せそうなんだけどな〜。あの花について、何か知ってる様な。

でも、とりあえず、、、」


難しい顔のままメルは言う、つぎの言葉を急かす様にキャプテンが言う。


「とりあえず何だよ?」


メルはピタリと足を止め、力の無い声で言う。


「お腹すいた。」


ぐぅーとお腹の鳴る音と、はぁー、とキャプテンが溜息をつく声が通りに響いた。

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