平安探偵奈良丸の事件絵巻

@torasann5656

第1巻 出会い(前編)

「ギャーーーー!!!!!!!!!!」

 屋敷の中にご主人様の叫び声がこだまする。それを聞きおらを含め屋敷内にいた召使い達は急いで声が聞こえてきた部屋に向かう。するとご主人様は呆然と立ち尽くしていた。そしてご主人様はこう呟いた。

「わしの壺が・・・消えとる・・・」




「はーぁ、大変だなぁ・・・」

 そう呟きながらおらは屋敷の庭をほうきで掃いている。おらのご主人様である牛河骨道様は、都一番の豪商だ。年齢も60を超えていると言うのに未だに迫力は若い頃のままだ。そして豪商なだけに屋敷の面積も並みじゃない。だから毎日掃除をしてるけどそれだけで1日の大半が終わってしまう。そういえば自己紹介が遅れていたな。おらの名前は寅吉。歳は10才で元々は大和の国の農村で家族で暮らしていた。しかし口減らしという事でおらは、7才の時にこの牛河骨道様の屋敷の召使いとして売られてしまった。

 ここでの仕事は、本当に大変だ。まず朝は、卯の刻(朝の5時くらい)に起きて庭の屋敷の廊下などを掃除する。それから庭の掃除をしたりご主人様の身の回りの世話をしたりしていたらあっという間に1日が終わってしまう。そしてさらに最近ご主人様は、「猫」という動物を愛でるために飼育を始めたがそのお世話もおらが担当することになってしまった。ただでさえ仕事が多いというのに本当に大変だ!!でも最近、この猫にミケという名前をつけて可愛がってやるのが唯一の楽しみなんだ。でもたまに部屋にネズミや蛇の死体を死体を持ってくるのはやめてほしいんだよな・・・

「おい!掃除の手が止まってるぞ!!!」

 おっと少し気を抜いていたら先輩の達郎さんに怒られちゃった(笑)さぁ仕事仕事!!!



 そしてあれはある日の昼ごろだった。おらは、いつものように庭で掃除をしていた。

 すると

「ギャーーーー!!!!!!!!!!」

 屋敷の中にご主人様の叫び声がこだまする。それを聞きおらを含め屋敷内にいた召使い達は急いで声が聞こえてきた部屋に向かう。するとご主人様は呆然と立ち尽くしていた。そしてご主人様はこう呟いた。

「わしの壺が・・・消えとる・・・」



 それからすぐに屋敷内にいる全員で壺の捜索を始めた。壺というのは、ご主人様が最近、唐の商人から買った遠い外国の物のことだ。日本のものと同じような形をした壺に取っ手が2つ付いている形状をしていて色や柄は、唐や日本の壺とは違いとても鮮やかだ。そして捜索が始まって半刻(一時間)ほどだった時

「壺がみつかったぞー!!!」

という声が聞こえてきた。おらは、安心した。なぜならご主人様のご機嫌が悪いとよく召使いたちの食事の量を少なくするーーーまやしてやお気に入りの壺がなくなって見つからないなんてことになったら大変な事になっていたからだ。(きっと全員が3日ほど飢えてしまう事になっただろう)おらは、急いで壺がみつかった場所に急いだ。しかしなにやら嫌な予感がする。理由はこれだ。声がした方に近づくにつれておらが住み込んでいる召使いの部屋に近づいてるという事だ!!そして案の定嫌な予感は的中した。やはり壺は、おらの部屋の中にあった・・・



「貴様!!銭に困って壺を盗んだんだろう?!?!」

おらたちはいま邸の庭にいる。壺は、現場保存をするために部屋に置きっぱなしだ。そしてご主人様は、ずっとおらに向かって叱責をしている。しかしおらは、本当に何も知らない。

「壺なんて盗んでないです!何も知りません!!!」

おらは、必死に弁解をした。本当に身に覚えがないからだ。しかしご主人様をはじめみんな聞く耳を持たない。それも当然だ。だって間違いなく壺はおらの部屋から見つかったのだから。しかも壺の取っ手の片方は欠けて取れていた。ご主人様が烈火のように怒るのも無理はない。するとこの状況で1人の屋敷従者が息を切らしておらの部屋にやってきた。

「ご主人様、検非違使の役人たちがやってきました!!!」

「わしが呼んだのだ!すぐにお通ししろ!!」

検非違使庁とは京の都の警護や裁判などを行う警察のような組織だ。これは、相当まずい状況になってきたぞ・・・



「えーー、ワシがこの件を担当する検非違使庁府生(検非違使の役職)、紅森倉之心である!!!」

と自己紹介と共に1人の男があらわれた。年齢は40代くらいでがっちりした体格だ。顔の下半分は、髭で覆われていて赤い着物と烏帽子をつけている。

「では、牛河殿。さっそくですが事件の内容を詳しくお聞かせ頂けますかな?」

「はい、府生殿。実はですね・・・」

とご主人様は、事の端末を話し始めた。そして話が終わると府生殿は、ろくに現場をみるわけでもなく

「よーし!!この餓鬼を本庁までつれていけ!!!」

と手下に命じおらは、役人たちに両脇を抱えられた。あーー、終わった・・・おらの人生・・・・・・










と思ったその時、再び1人の屋敷従者が息を切らしてやってきてこう言った。

「ご主人様、今度は占い師の奈良丸と名乗る者ががやってきましたが・・・」

「あー、その者もワシが呼んだのだ。すぐに通せ!」

え?占い師???この状況でなぜご主人様が占い師を呼んだのかおらはよくわからなかった。府生様も

「牛河殿!勝手にこのように関係の無い者を呼んでもらっては困りますな!!!」

と怒っている。するとそこに17歳くらいの男が現れてこう言った。

「私が占い師の色神奈良丸でございます」


そしてこれがおらと奈良丸さんの初めての出会いだった・・・・・・































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