「赤き稲妻」第3章:滅亡への秒読み(タイムズ・ランズ・アウト)

(1)

その時は、敵が神々であろうと恐れず立ち向かいなさい。

立ちはだかるのが正義そのものであろうと一歩も引いてはなりませぬ。

それこそが「戦士が成すべき正義」です。

S・S・ラージャマウリ監督「バーフバリ 王の帰還」より


 まだ、空は暗い。とは言え、月の位置からすると、夜明けまで3〜4時間と言った所か。

 あの戦いの場から何とか逃れた私は、地図を見ながら、モーターサイクルを押して歩き続けた。

 道路上の交通標識の大半は「世界共通語」なので、今、自分が居るのが地図上のどの辺りかは、何とか見当が付いた。

 別の世界から来た2人の戦士……しかも、その2人は、敵対しているにも関わらず、どうやら互いが互いにとって「別の人生を辿った平行世界版の自分」らしい。

 その片方……青い「鎧」の戦士は、どうも「世界政府」の思想とは相容れない思想の持ち主らしいが、少なくとも、私を助け逃してはくれた。

 借りは返さねばなるまい。

 どれほどの時間が経ったのか……巨大な石の鳥居、そして、もう日本ではほとんど使われなくなった「漢字」が書かれた大きな石碑が有る場所に辿り着いた。

 そして鳥居の先には山。石碑に書かれているのは、おそらく、あの山か、その山頂の神社の名称だろう。

 多分、あの山が「高良山こうらさん」。

 道の両側には民家や個人営業らしい商店……おそらくは、この先に有る神社の参拝者向けの店なのだろう。

 そして、山の麓まで辿り着いた私は、モーターサイクルを止め、参道と山道の中間のような道を山頂目指して歩いていく。

 標高はそれほどではない。おそらく三〇〇m前後だろう。道も険しくはなく、「鎧」を着装したままでも支障は無かった。

 そして、山頂近くの赤い鳥居を通り、石段を上り……やはり、かつては壮麗だったかも知れないが、今は寂れた社殿が有った。

「貴方なのか? ミリセント……」

 十代前半の少女の声……。世界共通語……。そして聞き覚えが有る……。

 嘘だ……生きていたのか?

 嬉しさよりも、先に困惑が心に満ちた。彼女の口調もそうだった。

 チャユと青い「鎧」の戦士のある会話が心を過る。

 いや、待て、私の恋人と云うのは、まさか……。

「テルマ?」

「何から……話すべきか……」

 何が起きたのかまでは判らないが……他の世界から来た「継ぎ接ぎの『鎧』の戦士」が言っていた事が真実だとしたら……どうやら……私と彼女こそが、この世界を滅びに向かわせている元凶らしい。

 では、逆に、私と彼女が、この世界を元に戻す事が出来るのだろうか?……それとも……?

「誰か来たのかね?」

 今度は世界共通語で、寝惚けた中年男の声。この声は……まさか……。

「ふんぎゃ?」

「ふんぎゃ?」

 続いて、間の抜けた脳天気な声。……そして、暗闇の中から……他の世界の「青い『鎧』の戦士」の従者である恐竜型の機械人形ロボットが姿を現した。

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青き戦士と赤き稲妻 @HasumiChouji

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