第19話 エピローグ 助教さんと。

 ここは、とある世界のとある国、とある国立魔法大学の、とある魔法技術研究室──。


 晴れた青空から、白い鳥が一羽、まっすぐに研究室に滑り込んできた。

 鳩そっくりの姿をした「手紙鳥」は、彼女の手に止まった瞬間に一枚の紙に形を変える。

「先生、事務さんから先日の始末書の修正依頼が来てます」

「はい……」

 青井さんは僕に用紙を渡すと、自分のデスクに戻っていく。ざっと目を通して、彼女に声をかけた。

「青井さん」

「はい?」

 彼女は振り向いて、首を傾げた。どことなくその仕草が、手紙鳥に似ていない……こともない。

「いつも……ありがとうね」

「はい? いえ、いつものことですから」

 彼女は返事をすると、再び忙しそうに資料をめくり始めた。

 鈍感だなぁ、とちょっと呟いてみる。

 午後の空。無数の「手紙鳥」が空を飛んでいるのが見える。今日もつかの間の昼休みに、学生たちは忙しく「手紙鳥」を送りあっているのかもしれない。

 手紙鳥の中でも、遠くまで飛べる高度な魔法を積んだものは、海を超えることもできるという。

 僕らは結局、青い空を飛ぶ白い手紙鳥の群れが、好きでたまらないのだ。

 ただ一つ自分の翼だけを頼りに、けれど仲間と励まし合いながら、世界の向こうを目指して飛ぶ、小さな白い鳥たちが。


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魔法大学の助教さん。~魔法が使えなくても研究者になれますか?~ 荒城美鉾 @m_aragi

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