これぞハイファンタジーと呼ぶに相応しい、丁寧に織り上げられた壮大な物語です。
まず何よりも、描写の緻密さに驚かされました。見たこともない異世界の景色が、目の前に鮮やかに浮かび上がるのです。
そこに登場するのが主人公・美しき王子カエルム。
この殿下が、見た目だけでなく大変なイケメンです。読みながら何度ときめいたことか。
従者ロスと共に隣国へ訪問中のカエルムが、巻き込まれた陰謀と世界の異変。
緊迫した状況の中で散りばめられた謎に迫り、真実を解き明かしていく楽しさもあります。
姉妹編『時の迷い路』とのリンクが見事な構成です。
もちろん本作のみでも充分楽しめますが、併せて読むことで世界の奥行きを味わうことができます。
非常に濃密な読書時間でした。
硬質で繊細なハイファンタジーがお好きな方におすすめです!
物語は、主人公カエルムが隣国のテハイザを訪れるところからはじまります。
カエルムの国であるシレアと隣国のテハイザは、緊張関係にあります。
それを解決するために、カエルムは王子でありながらもテハイザ王に会いに来たのですが……そこで、テハイザそしてシレアに異変が起こり、カエルムは予期せぬ事態に巻き込まれていきます。
主人公のカエルムは好青年でとても好感が持てますし、彼に振り回されぎみな従者ロスも魅力的です。
さらに、明るい少女スピカや穏やかな青年クルックス。出てくるキャラがみんな印象に残ります。
それだけでなく、描写がとても美しいです。この物語で、カエルムはほとんどテハイザ城から出ないのですが、飽きません。
城の美しい造形、城から望む海と空……まるで彼とともにテハイザ城を歩いているがごとく、風景が目に見えてくるのです。
その中で起こる、テハイザそしてシレアでの異変と見えないテハイザ側の思惑――カエルムが無事に事態を切り抜けられるのかどうか、見届けてみませんか?
ちなみにこちら、世界観設定と時間軸を共有する姉妹作品もあるようですが、この作品だけでも十分に楽しめます!