◆◆そして3年が過ぎ◆◆

ずいぶん、色々なことがあったなと改めて思う。


詩穂は、あれから父を癌で亡くした。

コロナ禍のなか、付き添いも充分にできなかったが、最期はホスピスで穏やかに、息子と見送ることができたのはせめてものことだった。


慶の家業廃業と転職。

介護職は大変だけれど慶の性にあっているらしい。

毎朝、欠かさず通勤前に電話してくれる習慣は途絶えたことがない。

これはとても幸せなこと。


でもコロナ禍は未だ収まったとはいえず、二人が逢えなくなってから丸3年が過ぎようとしている。


慶のお母さんは認知症が進んで、目が離せないらしい。

デイサービスを利用しながら、妹の智子が介護をしている。

時々、智子とも電話で話すけれど、状態を聞くたびに、あの明るくよく笑うお母さんが……と切なくなる。


2年前には、来年には……と思っていた。

1年前には、来年こそは……と願っていた。

こんなふうに大切な相手を思いながら、逢えない日々に耐えている人たちが今もたくさんいる。


これからのことは誰にもわからない。

いつかまた慶と逢って、あの温かな手に触れる日は来るのだろうか。


だけどだからこそ、詩穂は毎朝の電話を大切に嬉しく思っている。

今日も慶の声が電話から聞こえる。


「おはよう」


目を閉じて微笑んで答える。


(了)


✂︎-----------------㋖㋷㋣㋷線-------------------✂︎


◇あとがき◇


ずいぶんと間があいてしまいました(大汗)

これは「黄昏日記」の詩穂と慶の” それから ”の物語になるわけですが、途中でコロナ禍があり、それもまだ収束することはなく、時代はwithコロナ?などとも言われるように。


この間、世の中もずいぶんと息苦しく暮らしにくくなってしまいました。


詩穂と慶にもそれは影響し、その上、お互いの状況も変わっていきます。

試練……なのでしょうね。

年齢的にももう若くはない二人には背負うものも増え、体調問題も。


逢えない二人がこの先、逢うことができるのかはわかりません。


それでも

毎朝の電話に心温められるような二人なら、きっと大丈夫。そんな気もします。


暫く、書けなかったために、設定を見直したりしながら、書き継ぎましたので、何処かに矛盾があるかも(^^;ですが、敢えて今年のうちに完結させたかったので、まずはこのままで公開しました。

(もちろん、読み返しはしていますけれど)

また、読み返しをしながら、加筆修正をこっそりするかもしれません。m(_ _)m


この物語を愛してくださった皆様。長くにお待たせしてしまってごめんなさい。


また、いつか別の物語で……。


ありがとうございました。


☪つきの

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黄昏物語~それからの二人~ つきの @K-Tukino

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