第6話 三人目のプレーヤー

「あの〜。ちょっとよろしいですか?」


 かなちゃんが恐る恐る声を出した。


「何だ! ああーっ?」


 その粗暴な声に一度は後ずさりした彼女だったが、一度深呼吸して再び声を出した。


「その部屋の問題は何ですか?」

「ちょー難しい問題だぜ!」


「こちらで解けるかもしれないので問題を教えて下さい」

「わかったよ。問題は99×99だ」


 はい? 全然難しい問題じゃないじゃん!


 ちょっと待てよ。この問題の答えを教えてやると、こいつがこの扉から解き放たれる事になるんだよな。こんな簡単な問題が解けない問題ありの人物を解き放つのはどうなんだ?


「どうする?」

 俺はかなちゃんに意見を求めた。


「問題がありそうな人ですね。でも、この部屋の問題がプレーヤーを三人にするですから……」


 あ〜、背に腹は変えられないって事か。本当に都合良く出来てるな。このゲーム。

 俺の中では納得出来ない、腑に落ちない違和感だらけだが、先に進む為には受け入れるしか無いのかもしれない。


「わかった」

「では、答えを教えますね」


 かなちゃんは扉に向かって声を上げる。


「99×99は(100-1)×99で計算すれば楽です。つまり、9900-99が答えになります」


 しばらくの間、扉の向こうから音がしなくなって、数秒間の静寂の時間が流れた。


「わかった! 9801か!」


『ピンポン!』

『正解です! これからこの部屋の扉を開放します』


 扉が開き始める。どんな厄介な奴が出てくるのか?


「なっ!?」


 開いた扉から見えた姿は、ドリルのように尖ったリーゼントヘアに、短い学ランにだぼだぼのパンツ。

 これって何か古〜いタイプの不良だよなぁ。


「ふあぁー! やっと出れたぜ!」


 そう言いながら、肩を回したり首をこきこきいわせながら捻ったりしている。


 やがて、俺らが彼の視線に入ったらしく、

「お前らか、答えを教えてくれたのは。ありがとな!」


 お礼を言ってくるってことは、見た目とは違い良い奴なのかも知れない。そう思っているのも束の間。


「おっ、何かいい匂いがするな」

 辺りを見回し、

「味噌ラーメンか、いただき!」

「あ、それは……」


 止める間もなく、味噌ラーメンに食らいつく。

「あ、あ、あ……。私の味噌ラーメン……」


 かなちゃんが涙目で彼がラーメンを啜っている姿を見つめる。

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