幼女に愚痴を聞いてもらうにゃ~


 我が輩は猫である。名前はシラタマだ。神様のことは好きではないとか言っていたけど、やっぱり大っ嫌い!


 ちょっとした確認で天孫降臨するスサノオノミコトは怖いだけでそこまでではないけど、毎日のように自慢話しに来るかまってちゃんのツクヨミノミコトは確かに好きではないけど、金タライを落としてあろうことかわしの大事な所にムチ打つアマテラスノオオミカミのことは、大っ嫌い!


 金的をぶたれて半日ほど寝込んだわしは、自分の頭に何十個ものタンコブを作りながらアマテラスに罵詈雑言を言いまくって倒れて眠るのであった。

 ちなみにタンコブは1メートルぐらい重なったので、皆は死にそうなぐらい笑ってた。でも、笑い終わったあとは介抱してくれたよ?



 その夜……


 アレだけアマテラスの悪口を言ったのだから、わしは夢の世界にいざなわれ、気付いたら絶景な花畑に囲まれたテーブル席に座っていた。

 それならばこれ幸いと怒鳴り散らそうとしたけど、わしの目の前にはパッツン前髪のかわいらしい幼女が座っていたので怒りは飲み込んだ。


「にゃ? その顔は……お前にゃ??」

「あなた、久し振りね」


 幼女の正体は、わしの元女房。元の世界で広瀬ララという体に輪廻転生しており、何故かアマテラスの親友になって度々わしの夢の中に現れるようになった人物だ。


「にゃんでお前が……」

「なんかアマちゃんにキレてるらしいじゃない? だから私に、謝っていたと伝えてくれと言われたんだけど……」

「自分で謝りに来いにゃ!!」

 

 メッセンジャーに謝らせるなんてするから、わしの怒りは再燃。でも、悪口を言うとタライが落ちて来るから、口を真一文字に結んで貧乏揺すりするだけだ。


「まあまあ。たっつあんの大福あるわよ」


 するとララは、どこから取り出したかわからないわしの好物の大福とお茶を出して宥めるのであった。



「それで……何があったの??」


 わしが大福をたらふく食ってお茶をズズーっとすすったところで、溜飲が下がったと察したララの質問が来た。


「アマテラスが酷いんにゃ~。異世界でお手伝いしてあげたのに、わしに呪いをかけたんにゃ~」

「異世界でお手伝い? 初耳ね」

「あ、まだ見てないんにゃ。じゃあ、ネタバレになるから言わないほうがいいかにゃ?」

「う~ん……そうね。呪いだけ教えてくれる?」

「それがにゃ、タライ……いや、やっぱ今日はやめとくにゃ」

「タライがどうしたの? そこまで言ってやめられると気になるじゃない?」

「ぜったい笑われるんにゃも~ん」

「今日の出来事?」


 わしが喋ることを拒んだら、ララは小さい手で空中に四角を描いた。そして「巻き戻し」とかブツブツ呟きながら人差し指を右から左になぞっているので、何をしているのかとわしはララの隣に移動した。


「なにこれ!? アハハハハハ。何段アイスなの!? アハハハハハ」


 そしたらちょうどララがイスごと後ろに倒れたので、わしは慌てて支えたけど、空中に自分の姿が映っていたからには驚きを隠せない。


「ブッ!? にゃはははははははは」


 いや、タンコブのせいで身長が2倍になっていた自分を見たから大笑い。せっかく助けたララごと後ろに倒れて、2人でしばらく笑い転げるのであったとさ。



「あぁ~……お腹痛い。表情筋が痛い。全部痛い」


 ララは今日のタライ実験を一から見て、何度も何回も笑い転げていたのだから、気持ちはわかると言ってやりたいところだが、わしは笑われすぎて泣きそうだ。


「酷い呪いにゃろ?」

「プッ……ホントに……アハハハハハ」

「わしの顔を見て笑うにゃ~~~」

「アハハハハハ」


 わしの顔を見ただけで笑われては話にならない。ひとまずララと背中合わせで座って話をする。


「なんて言うか……ご愁傷様。プッ……」

「もういいにゃ。忘れろにゃ。お前に笑われすぎて、アマテラスを怒る気も失せたにゃ」

「フフ。これが作戦だったみたいね」

「だろうにゃ~」

「まぁ、あのムチだけは、やめるように頼んでおいてあげるわ」

「そうしてくれると助かるにゃ~」

「プッ……違うの何にしよう? アハハハハハ」

「にゃに変更しようとしてるんにゃ~。やめるだけでいいからにゃ? てか、タライもにゃんとかしてくれにゃ~」

「アハハハハハ」


 こうしてアマテラスの呪いは、元女房によって、より凶暴な物に改造された……かどうかは、神のみぞ知る……





「そういえば、にゃんでまた復活したんにゃろ?」


 一通り笑われまくったわしが話を強引に変えると、ララは不敵に笑う。


「フッフ~ン♪」

「にゃ~?」

「私が主役の物語が始まったのよ!!」

「にゃ~~??」


 そんなことを言われても、わしは意味がわからない。


「お前が主役って……ただの人間が出て面白い物語になるにゃ?」

「ただの人間じゃないでしょ? 輪廻転生してるのよ??」

「う~ん……別に特別にゃ力は持ってないから面白くなるとは思えないにゃ~。それに、学のないお婆ちゃんが現代に戻ったところで、文明の遅れてる異世界じゃないから無双とかできないにゃろ?」

「確かにそうだけど、お兄ちゃんがね……いや、これ、あなたに内緒にしていることだから言っちゃダメなヤツか……もういいや。アマちゃ~~~ん!!」

「にゃ~~~??」


 ララが何故かアマテラスを呼んでいるので、ますます意味不明だ。


「あなたにはまだ言ってなかったけど、お兄ちゃんって、前世は猫なの」

「猫にゃ? もしかして……わしの入る予定だった体にゃ!?」

「じゃあ、アマちゃん。この猫の記憶消して」

「はいは~い」

「アマテラス!? 出たにゃ!?」


 わしが声がした方向に振り返るとアマテラスが立っており、隣には頭まで固定する電気イスみたいな物があったので、怒りよりも冷や汗が止まらない。


「にゃ、にゃにそれ? わしを死刑にするつもりにゃの??」

「いえいえ。日本のドッキリ番組に、ビリビリイスってのあるじゃないですか?」

「それはお尻にビリッと来るだけで、頭までセットされないにゃ~~~!!」

「は~い。行きますよ~?」

「に゛ゃに゛ゃに゛ゃに゛ゃに゛ゃに゛ゃに゛ゃに゛ゃ……」


 アマテラスに掛かれば、最強の猫もただの猫。わしは電気イスにムリヤリ張り付けられ、電撃を流されて夢の中の記憶を失うのであった。ついでにアマテラスへの恨みも……


「ではでは、私が活躍する『お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は転生者である。』をお楽しみください。応援よろちくおねがいちまちゅ」

「ララさんも幼女が板に付いて、あざとくなりましたね~」

「それは言わない約束でしょ~~~」


 こうしてわしが電撃を喰らってビリビリしている前では、ララがゴリッゴリの告知をして、アマテラスが茶々を入れていたのであったとさ。


「に゛ゃに゛ゃに゛ゃに゛ゃに゛ゃに゛ゃに゛ゃに゛ゃ……」

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アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~ @ma-no

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