異世界転移のお土産にゃ~
我が輩は猫である。名前はシラタマだ。神様はどちらかというと好きではない。
アマテラスに拉致されて異世界の邪神と戦わされたけど、帰って来てからは平和なモノ。今日もわしはキャットタワー屋上にある離れの縁側でお昼寝している。
「シラタマ君。ちょっといい?」
「起きてだよ~」
そのお昼寝を邪魔するベティとノルンに撫で回されてわしは目覚めた。
「ふにゃ~……にゃに~?」
「「ジャジャン。問題です」」
「薮から棒になんにゃ~」
わしがあくびをしながら質問すると、二人は絵の書かれた紙を目の前に置いた。
「これはなんでしょう?」
「にゃ~? 海に潜ってるおばちゃんかにゃ??」
「おしいだよ! ヒントは職業だよ~」
「あ~……海女さんにゃ?」
「さんはいらない!」
「海女にゃ」
「「せいか~い」」
「てか、これはにゃに?」
「「続きましては……」」
二人はわしの質問に答えずに次々とカードを並べ、「寺」と「巣」と「野」を立て続けにわしは当てた。そして次の絵は、ほっぺたに鳴門模様が書かれているハゲたオッサンが両手両足で拍手をしているような絵が出て来た。
「これは難しいよ~?」
「当てられるんだよ~?」
「にゃんだろ……にゃんかアホっぽい人だにゃ」
「「おお! それを短く!!」」
「えっと……アホにゃ?」
「「せいか~い」」
「だから、これはにゃに?」
二人はわしの質問にはまったく答えずに、先ほど正解した紙を一番目から順番に並べた。
「じゃあ、最後の問題です」
「これを左から読み上げるんだよ~」
「『海女』『寺』『巣』『野』『アホ』にゃ。ぎゃっ!?」
「「やった! きゃははははは」」
わしがカードを読み上げた瞬間、どこからともなく金タライが落ちて来て「ガィィィン」と頭に直撃。マンガみたいな大きなタンコブまで出来てめっちゃ痛がってるのに、ベティとノルンは笑い転げてやがる。
「嵌めやがったにゃ~~~!!」
「「「「「あはははは」」」」」
「「「にゃはははは」」」
「なにそれ!? あはははは」
なので激怒したら、離れの入口から聞き覚えのある笑い声が聞こえて来た。
「頭に何か乗ってるよ? 大丈夫?? プププ」
「さっちゃん来てたにゃ!?」
離れに笑いながら入って来たのは、猫ファミリーと黒猫ワンヂェン。さっちゃんとその護衛の猫兄弟までいやがる。
どうやらさっちゃんたちがお忍びで来ていたから、ベティ&ノルンは神様に悪口を言ったらタライが落ちて来るこの謎現象を見せてあげようと、わしにクイズを出していたみたいだ。
「わっ! なんかポロッと落ちた。もう一回やって~」
「これ、めっちゃ痛いんにゃよ?」
ぷく~っと膨らんだタンコブがわしの頭から落ちて消えたら、さっちゃんはアンコールを御所望。でも、異世界から帰ってからリータたちにも何度もアンコールさせられたので、わしはやりたくない。
「ねえ~。もう一回だけ~」
「痛いからイヤにゃ~」
「先っちょだけ。先っちょだけ、ガンッてしてくれたらいいから! ね?」
「変にゃお願いの仕方しにゃいでくれる?」
「お願い~~~」
「揺らすにゃ~~~!!」
さっちゃんがこうなっては仕方がない。変なことを口走る前に、わしはタライを受けてタンコブを作るのであった……
「「「「「アンコール! アンコール!」」」」」
「一回って言ったにゃ~~~」
でも、一回で終わらず、三回もやらされるわしであったとさ。
とりあえずタライを計5回も受けたら、皆も満足してくれたと思う。なのでわしは頭をさすっていたら、さっちゃんが撫でて来た。悪いと思っているのだろう。
「ベティちゃんから聞いていたのとちょっと違うのね。目から火は出ないの?」
「知らないにゃ~」
「もうちょっと見せて~」
いや、まったく悪いと思っていない。人体実験……いや、猫体実験をしたかったっぽい。
「これ、本当に痛いんにゃ~」
「シラタマちゃんがあんなので痛がるのもおかしいわよね……タライもタンコブもすぐに消えるし、どうなってるんだろう?」
「これは神様の呪いなんにゃ~」
「神様に呪われるって、何したの??」
「ちょっとムカついたから、アホって言っただけにゃ~。ぎゃっ!?」
主語も付けていないのにタライが落ちて来たので、また皆は爆笑。さっちゃんは笑いながらわしのタンコブをつつきやがる。
「つんつん。あははは。なんでこんなに膨らむの~。あははは」
「痛いからつつかないでくんにゃい?」
「へ~。こんなので痛いんだ。これは痛い?」
さっちゃんはわしの肩をバシッと叩いたけど、効くわけがない。さっちゃんの手のほうが痛そうだ。
「つつつ……」
「急に叩くからにゃ~。回復魔法掛けてあげるにゃ~」
「ううん、大丈夫。それより、非力な私がタンコブをつつくだけで痛いっておかしくない?」
「まぁ……でも、神様の呪いなんにゃし、そういうもんなんにゃろ」
「え~! 気になる~。実験しようよ~」
「だからイヤって言ってるにゃ~」
「みんなも気になるよね?」
「「「「「うんうん」」」」」
わしが嫌がっているのに、皆は一致団結。多数決までして、この謎現象の正体に立ち向かうのであったとさ。
「まずは、タライの強度を確認します! シラタマちゃん。作って!」
「にゃんでわしが……」
さっちゃんの指示で、自分にぶつけられる物を自分で作らされるわし。素材は、普通の鉄、黒魔鉱、白魔鉱だ。
「じゃあ、落とすよ~?」
「勝手にやってくれにゃ~」
もうわしもやけくそ。あぐらを組んで、コリスに乗ったさっちゃんが各種タライを落とすのを待つ。
三種類のタライがわしの頭に直撃して簡単な質問に答えたら、さっちゃんたちは半笑いで会議だ。
「音だけで言ったら、普通の鉄が一番近かったよね?」
「うんだよ。でも、どれも痛がらなかったんだよ~」
「もっと勢いつけたほうがよくない? それか、あの猫の頭を直接ぶっ叩くとか??」
「コリスちゃん! ゴー!!」
「わかった~」
「コリスはダメにゃ~~~!!」
さっちゃんとノルンとベティの検証はギリ聞いていられたが、さっちゃんが指示を出したコリスはアカン。コリスのパワーでは、最悪キャットタワーが崩壊してしまう。
この訴えは皆も納得してくれたが、リータも一緒じゃぞ? メイバイもヤバイって~。
ここは一番非力なさっちゃんと行きたかったが反動で痛みがあるかもしれないので、ベティとワンヂェンが王様の頭をタライでフルスイングするらしい……
「つ~……痺れた~~~!」
「硬すぎるにゃ~~~」
その結果、二人の手はジーーーンとなったんだってさ。
「それで……どう??」
さっちゃんのザックリした質問に、わしは
「白魔鉱はちょっと痛かったかにゃ? あとは、わしの自尊心がめちゃくちゃ痛かったにゃ~」
「てことは、タライ自体もまったく別次元の物なのね……次は、避けられるかどうか試してみましょう!」
「まだやるにゃ!?」
わしはいますぐこんな実験やめたいのに、皆は許してくれない。
「シラタマちゃんって、誰よりも速いじゃない? そんなシラタマちゃんが避けられないわけがないじゃない??」
「いや、神様の攻撃を避けきる自信ないにゃ~」
「なに言ってるのよ! これさえできれば、もうタライに恐れることはないのよ! シラタマちゃん、ファイトにゃ~~~!!」
「「「「「ファイトにゃ~~~!!」」」」」
「にゃんか趣旨変わってにゃい??」
皆の半笑いの応援が続くので仕方なくやるけど、わしが動く前にタライは直撃。なので「走りながらアホって言ったらいいんじゃない?」と助言をもらったのでその通りやったら、タライを「ガィィィン」と喰らってわしはゴロゴロ転がった。
「つつつ……」
「見えた人いる?」
「「「「「まったくにゃ~」」」」」
さっちゃんどころかコリスの目ですら追いつけない速度なのに、タライは正確にわしの頭に直撃したので、皆は「にゃ~にゃ~」会議。
その中をわしは痛がりながら皆の元へ戻ったら、嫌なヤツがやって来た。
「何か騒いでおったが、何をしておったんじゃ?」
「あっ! タマモ様! ちょうどいい所に来てくれました。かくかくしかじかで……」
わしと同レベルの化け物、九尾の巨乳美女、玉藻だ。絶対にアンコールさせられるので、いま一番わしが会いたくなかったのに、遊びに来やがった。
その玉藻はさっちゃんから説明を聞いたけど、意味不明って顔。そりゃ、タライがどこからともなく落ちて来て、おもちみたいなタンコブができるなんて到底信じられないのだろう。
「よくわからんが、シラタマのことを見てればいいんじゃな」
「そうです! シラタマちゃん、ゴー!!」
「にゃんで今日に限って……」
さっちゃんの号令で、わしはブツブツ言いながらダッシュからの悪口からのタライ直撃からのゴロゴロ。
「おお! 何がどうなっておるんじゃ!?」
玉藻は驚いているが、それでもわしのことが見えていたっぽい。
「タライがな。シラタマの頭に引き寄せられるように動いてな。ぶつかった瞬間にあやつは倒れたのじゃ」
「「「「「おお~」」」」」
玉藻の驚異的な動体視力で説明したら、皆はスタンディングオベーション。でも、その拍手は痛がっているわしにしろよ。
「これがタンコブか……」
「痛いんにゃから、玉藻もつつかないでくれにゃい?」
「痛い? そちが痛がるとはおかしな話じゃな。ぬお!? ポロリと落ちたぞ! 大丈夫か??」
「そんにゃもんなんにゃ~」
玉藻が謎現象にビビッていたら、さっちゃんがこれまでの検証を教える。すると、今まで神様の存在を信じていなかった玉藻は、わしが事実を言っていたと信じ始めた。
「アマテラスノミコトに悪口を言うとタライが落ちるのか……スサノオノミコトだとどうなるんじゃ?」
「怖いからやるわけないにゃろ!!」
スサノオは絶対やりたくない。下手したら天孫降臨してわしは殺され兼ねないから、土下座して断った。ツクヨミも一緒。絶対、愚痴を言いに夢枕に立つから、やってらんない。
いちおう玉藻には、絶対にツクヨミに会いたいと考えるなと忠告したけど、あの顔はどうなることやら。同じツクヨミ被害者の会のメイバイたちから必死に止められていたから、大丈夫かな?
「なるほどのう……ところで、頭を守っておったらどうなるのじゃ?」
「新しい提案にゃんてするにゃよ~」
「「「「「それ、面白そう!」」」」」
諸々に納得した玉藻が新提案なんてするものだから、皆も興味津々。様々な可能性をあげて、おやつの賭け合いになった。
「
「私は白魔鉱を割るに一票!」
「あたしは横から後頭部に当たって目玉が飛び出すに一票よ!」
玉藻とさっちゃんの賭けた物に皆の票が集まり、ベティは大穴狙い。でも、そんなスプラッター映画みたいなのになったら、全員引くぞ? わしも怖いんじゃけど~~~??
もちろんわしは、完全防御に一票。先ほど作った白魔鉱のタライを頭に被って、皆に準備完了の合図。
「これで最後だからにゃ? どんにゃ結果ににゃろうとも、もうやらないからにゃ?」
「「「「「はいにゃ~」」」」」
「じゃあ、さっさと終わらせるにゃ。カウントダウンにゃ~!」
「「「「「スリー! にゃ~! ワン! ゼロ~~~!!」」」」」
「アマテラスのアホにゃ~~~!!」
皆の様々な思いを乗せて、わしが声高々に悪口を叫ぶと……
「ッ!!??」
「「「「「……」」」」」
わしは声も出せずに前のめりにぶっ倒れた。皆もわしが泡を吹いて倒れているこの惨状を見て、笑うこともできなかった……
「えっと……正解は、足下からムチが出て、シラタマの股間をビシッと強打するじゃ……シラタマ! 大丈夫か~~~!!」
というわけで、誰も当てられず。玉藻はわしを哀れんで腰をトントン叩いてくれるのであった。
「「「「「プッ……」」」」」
「「「「「クククク……」」」」」
「「「「「あははははは」」」」」
「「「にゃははははは」」」
ただし、あとから笑いが込み上げて、しばらく死ぬほど笑い転げる皆であったとさ。
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ついにアイムキャットが再始動!
『猫王様の千年股旅』というタイトルでアップしております。
名前の通り千年後まで書く予定ですが、果たしてこの物語は終わるのか!?
乞うご期待!!
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