百文字語 ～ぴったり百文字の物語～

11月

2020年11月03日　「桃太郎、安堵」

「桃から産まれた桃太郎」自分の名前の由来を聞いた桃太郎は衝撃を受けると共に胸をホッと撫でおろした。よかった、もしこれがパッションフルーツやドラゴンフルーツだったら随分と長い名前になるところだった。

2020年11月10日　「込められた意味」

付き合う前、彼女は僕に「おむすび」をよく作ってくれた。僕との間に縁が結ばれますようにとの願掛けだったらしい。じゃあ、いまの彼女が同じ料理を「おにぎり」と呼ぶのにはどんな意味が込められているのだろうか。

2020年11月16日　「笑う理由」

「あなたが涙を流すとき、私は笑うわ。だって、ふたりとも泣いていてはあまりにも悲しいでしょう？」そう言って僕の頬を両手で包んだ。「それにあなたの泣き顔はあまりに滑稽だもの」ひどい言葉に僕は思わず笑った。

2020年11月26日　「ブーメラン２」

「そうやって女だからって一括りにするのって最低」僕の何気ない一言が彼女の気に障ったらしい。彼女は食事代を投げるようにこちらへ寄越すと「だから男は駄目なのよ」と吐き捨てるように言って足音荒く立ち去った。