見習いカミサマ

@Acorn2358

見習いカミサマ

「ふゎぁ~。

今日も現世は平和だな~。

平和すぎて私は退屈だよ・・・




うぁっ!!!

す、すす、すみませんっ!!

申し遅れました!

え、えーっと・・・

簡単に言うと、私は神様!

こうやって、空から現世を見守ってるんだ~。

でも最近はホントに平和すぎて、平和すぎて……

もう、嫌になっちゃう!!

とは言っても私はまだ見習いだから、あんまりとやかく言えないんだけどね

えへへ・・・。」




その頃、現世では人間の孤独さを嘆くかの如く、雨が地面を打ち続けていた。




とあるマンションの屋上、

立ち入り禁止であるはずのその場所に、

1人の少女が、佇んでいた――。


「・・・来ちゃっ・・・た。

・・・どう・・・しよう・・・・・・。」


辺りには、雨音だけが響いている。


「もう・・・終わりにしようかな・・・・・。」




天上とは皮肉なもので、現世のあらゆる負の感情をコントロールしているにも関わらず、その場は意外と能天気なものだ。


今も辺りは一面真っ白で、見上げると太陽が眩しすぎるほど輝いているだけ。

まるで、そこには「暗」という概念がないかのような……


「ん?

あのマンションにいる女の子って、もしかして・・・


よし、私の出番だ!

彼女を助けてあげよう!!」




雨は一向にやむ気配はなく、今もあらゆるものを容赦なく打ちつけている。


少女の目の前には柵があり、その手には柵が握られている。


「・・・ここを越えれば・・・、

私は楽になれるんだよね・・・・・・。

ねぇ、神様・・・

もし・・・あなたが私を見てくれていたら・・・

どうか私に・・・『幸せ』を・・・与えてください・・・」





「うぉっ!?

もしかしてあの子、私のこと見えてる!?

ってまぁ、そんなわけないか~


よし、今回こそは私の力だけであの子を何とかしてみせるぞ~!!」




雨はさらにその勢いを増し、もう少女には地上の喧騒は聞こえてこないほどになっていた。


彼女は気づかぬうちに地上を見ようとしていた。

しかし、天候のせいで視界は霞んでいる。

それ故に彼女の目下の世界は、まるで黄泉の世界へと直接繋がっているかのような・・・




「ふぇ~?!

ど、どうしよう?!

早くしないとあの子が!!!

お、落ち着け~!!

わたし~!!」




彼女の身体は震えていた。


「・・・柵を・・・越えるだけ・・・・・。

それだけ・・・なのに・・・。

どうして・・・?

なんで・・・思い通りに身体が動かないの・・・・・?」


彼女はしばらく動かなかった。


「・・・はは・・・ははは・・・・・。

・・・もしかして・・・『怖い』・・・・・の・・・かな・・・・・?」


「・・・まだ、やり残したことばっかりだから・・・かな?

・・・もしかして・・・ホントに『神様』が・・・私を止めようとしてるのかな?」


彼女はまた、黙り込んでしまった。


「・・・そっか・・・・・

私は・・・まだ、死んじゃダメなのかな・・・

・・・え?・・・あれ?

私・・・もしかして泣いてる?


・・・あはは・・・

なんか・・・みんなに会いたくなってきちゃった・・・

今日は・・・もう帰ろう・・・。」




その頃、例の神様は・・・


「お、おぉ?

何とかなったか?


はぁぁ~~~~!!!

上手く行った~~~!?

これから、彼女はどうなるかな~?」




現世では、まだ雨が降り続けている。


「・・・早く・・・帰ろう・・・!

早く・・・お母さんに会いたい・・・!!」

彼女は走り出した。

彼女の顔に笑顔が戻ったのはいつ以来だろうか・・・


「え?」


走っている彼女の口から短い音がこぼれた。

しかし、その時にはもう遅かった。


彼女の身体は一瞬宙に浮き、次の瞬間に彼女の頭部に鈍い衝撃が走った。


彼女は動かなくなった。


ここは、立ち入り禁止のマンションの屋上。

他に誰も来るはずがなかった。




「よっしゃ~!!!

うまくいった~~!!!


ふゎぁ~~

一時はどうなるかと思ったけど、なんとか希望からドン底に落とせた~!!


え?

私は神様じゃないのかって?

お、言い忘れてたかな?

私は神様でも、死を司る神様の一族なんだ~

いわゆる死神ってやつ?


私はまだ見習いだから、今くらいのことしかできないけど、

百年後、いや数十年後に、私がこの人類を滅ぼしてやるんだから!!!


応援してね!」

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