弐
「...なんだコレ?」
俺は目の前のソレに絶句した。
『当同好会は一見様はお断りしております』
と書かれたコピー用紙が1枚、社会科資料室のドアに貼られている。
「いやいや、同好会に一見様も何も無いだろ!」
思わず独りで叫んでしまう。
畜生、プリントを見た時点で気付けばよかった。他の部活とは一線を引くようなあの簡潔さというか雑さ。
それに、よくよく思い出してみれば入学式の部活動勧誘の際に怪奇解決同好会などという名のチラシだけは貰っていない。勿論、あの災害レベルの勧誘会の中なら俺が貰い忘れたという線もあるがここまでヘンテコな名前なら頭の片隅くらいには残っているだろう。という事は、この会は会員を積極的に入れる気は無いという事だ。
普段の俺なら
「そういう部活もあるよな。今回は縁が無かったって事だ。うんうん。」
と納得して帰るところだ。
が、俺はここに来る迄に大変な労力を費やしたのだ。部室がこんな僻地にもあると知らずに通りかかる教師,先輩と思しき生徒に何度も道を聞いた。入学したての初々しい1年生にそれは限りなくストレスでしかない。そこ迄させておいて、『一見さんお断り』とは如何せん許し難いという貼り紙の主への憤怒。と、もう1つ。水沢が言い残した言葉が気になる。俺の能力...アレが活かされる部活などあるのか?
まァ、それはこれから確認すればいい。 不良生徒では無い限り完全下校時刻が迫れば部室から出てくるだろう。廊下にかけられた時計を見れば、あと1時間ほどで完全下校時刻の19時になる。俺はもう少しだけ辛抱する事にした。
─────あれから約30分は経つ。こうなったら此方から無理矢理入るか?
いや、流石にあの貼り紙を見て入室するのは常識と日本語力を疑われかねない。
しかし、段々と日も落ちてきた上にまだ冬の寒さが残る廊下にこれ以上居るのも、なかなかに辛くなってきた。だが、ここで帰ると今までの俺の労力が...。
などと、独り廊下で唸っていると。
「その同好会に何か御用かな?」
と、爽やかな声が降ってきた。
そちらを見るとハーフっぽい美男子がその声にも勝るとも劣らない爽やかな笑顔を此方に向けていた。
男の俺でさえドキッとしてしまった程だ。女子であればここで恋に落ちるところだろう。
──手に持つ『黒魔術 大全』という本さえ目撃しなければ。
忌み子達の祝杯 如月逸佳 @yukigitune
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